「【”老いた大盗賊と密偵の生きる喜びと夫々の夢。”今作は”犯さず、殺さず、貧しき者からは盗まず"の道を守って来た老いた大盗賊と、彼を慕う元盗賊の密偵の想いを描いたいぶし銀の一作である。】」鬼平犯科帳 老盗の夢 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【”老いた大盗賊と密偵の生きる喜びと夫々の夢。”今作は”犯さず、殺さず、貧しき者からは盗まず"の道を守って来た老いた大盗賊と、彼を慕う元盗賊の密偵の想いを描いたいぶし銀の一作である。】

2025年7月24日
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■”犯さず、殺さず、貧しき者からは盗まず"の掟を守って来た大盗賊・蓑火の喜之助(橋爪功)が京都から江戸にやってくる。
 喜之助は、若かりし頃の想い人おみよ(北乃きい)とそっくりな茶汲女・おとよ(北乃きい:2役)が抱える借金100両返済のために最後の大仕事をたくらんでいた。
 小房の粂八(和田聰宏)は独断で喜之助を思いとどまらせようとするが、彼の姿を見た蓑火の喜之助が集めた盗賊の一人が、小房の粂八が鬼平(松本幸四郎)の密偵である事を知っていたために、粂八は命を狙われる。

◆感想

・鬼平犯科帳の魅力を今更語るのも何であるが、池波正太郎は盗賊の中でも、極悪なる急ぎ働きをする盗賊と、蓑火の喜之助のような”犯さず、殺さず、貧しき者からは盗まず"の掟を守る盗賊との描き訳をキチンとしており、鬼平の沙汰の仕方も随分に違う。
 急ぎ働きをするような盗賊には、正に鬼のような対応をし、蓑火の喜之助のような盗賊には情けある沙汰を下すところが、一般庶民には受けいれられたのだろうと思う。

・この流れは”雲切仁左衛門”において、盗賊の目線で描かれており、私は両方が好きである。

・今作では、”犯さず、殺さず、貧しき者からは盗まず"の掟を守って来た大盗賊・蓑火の喜之助が、引退前に偶然に出会った且つての想い人にソックリの茶汲女・おとよと出会った事で、夢を見るのであるが、その結末はほろ苦い。
 だが、そこにこそ、池波正太郎の”盗賊は畳の上では死ねない。”と言う思想が貫かれており、それが哀しくも心に沁みるのである。

<今作では、ラストに相模の彦十を演じた火野正平さんを追悼するテロップ”火野正平さんの思い出と共に”が流れる。
 個性的な俳優さんが次々に世を去るのは、寂しい限りだが、何故か刃に斃れた蓑火の喜之助にダブって見えてしまったのである。
 軍鶏鍋を、鬼平と突く火野正平さん演じる相模の彦十は、もう見れないのである。寂しい限りである。>

NOBU
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