劇場公開日 2025年7月4日

「低予算ながら、長い歳月の描き方が秀逸」「桐島です」 Toruさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 低予算ながら、長い歳月の描き方が秀逸

2025年7月28日
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鑑賞方法:映画館

気になっていた高橋伴明監督の作品。

1970年代の連続企業爆破事件の指名手配犯、桐島聡が、約半世紀におよぶ逃亡生活の後、最期は本名で迎えたいと素性を明かし、その直後に他界。その知られざる生活を描く。

1970年代、反日武装戦線の活動に共鳴した大学生の桐島聡は、連続企業爆破事件の被疑者として全国指名手配となるまでの部分が前段で描かれるが、スクリーンの空気感は高橋伴明ワールド。

その後、偽名を使いながら逃亡生活を続け、内田洋として、藤沢にある工務店で長きにわたり真面目に勤め、質素な暮らしを送る中、音楽を愛する姿などとともに、「ウーヤン」と呼ばれ、周囲から信頼され好かれる存在となっていく。

その間の葛藤、その軌跡をフラッシュバックを交えながら、ストーリーとして展開していくが、その中で専ら善人として扱われているにも関わらず、結局自首するに至らなかった彼の人生には違和感を禁じ得なかった。

一方、他界するまで主役を演じた毎熊克哉が好演。インスタントコーヒーを飲むシーン、歯を磨くシーンといった日々のルーティンを描きながら、アパートの部屋に家財や本が増えて行くさまに、長い歳月をうまく感じさせる演出。

そのルーティンは、映画「パーフェクト・デイズ」と被るものもあり、低予算ながら映画としての造りは秀逸。

子どもの頃、丸の内に勤務していた父から、三菱重工爆破事件の惨状を聞かされており、長年貼られていた指名手配写真が頭に焼き付いていたこともあって、スクリーンに没入できた。

Toru