「充電方法は人それぞれだけど、笑顔とぬくもりは鉄板なんだと思う」顔だけじゃ好きになりません Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
充電方法は人それぞれだけど、笑顔とぬくもりは鉄板なんだと思う
2025.3.8 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(104分、G)
原作は安斎かりんの同名漫画(白泉社)
イケメンのSNSの中の人になってしまう女子高生を描いた恋愛映画
監督は耶雲哉治
脚本は三浦希紗
物語の舞台は、私立美乃和総合高等学校
イケメン好きの才南(久間田琳加)は、学校の公式アカウントの背景に映っていた奏人(宮世琉弥)を見つけて、独自で「本人不在のインフルエンサー」なるものを作っていた
さらに、公式に激励のDMを送ってしまうのだが、それによって、「接点」ができてしまった
それは、この公式アカウントは奏人が退学を免れるために運用されていたもので、10万人のフォロワーを獲得して学校の宣伝をすれば、これまでの欠席などが帳消しになるというものだった
奏人はDMを送ってくれた相手を探し出す
それが才南だったのだが、彼女を選んだ理由があって、それが後半でわかるようになっていた
映画は、この二人の関係に割って入るクラスメイト土井垣(中島颯太)を描き、さらに才南の親友・柚里(米倉れいあ)が登場してややこしくなってくる様子が描かれていく
いわゆる三角関係になっていくのだが、それを楽しむのが柚里の立ち位置だった
彼女は奏人との秘密の関係を追いかけることが趣味にもなっていて、双方が好き同士であることも感じている
さらに、そこに土井垣を焚き付けるという悪戯をしていて、一番強かな人間だったと言える
自身の恋愛にはさほど興味がなく、その色恋沙汰を活力にしている節があって、本作では、「自分を充電してくれるもの」というものを巧妙に描いていた
それが一致すれば恋愛へと発展するのだが、そう簡単にいかないところに面白みがある
好きな人の笑顔(土井垣)だったり、燃えるシチュ(柚里)だったり、顔面(才南)だったり、ぬくもり(奏人)だったり
それぞれが生きる活力を追い求めていて、それが重ならないのがイマドキなのかも知れない
一昔前ならばもっと即物的だったものも、今では細分化されていて、もっと複雑化している
容認欲求も進化あるいは鈍化しているところがあって、今の時代に生きる若者は大変だなあと思った
いずれにせよ、癒しの空間に放り込まれる感じなのだが、ある意味で「スクリーンに癒しを求めているファン」に向けてのアンチテーゼのようにも思えてくる
自分が見たいものと見せたいものには差異があって、その特別感というものが何でもアップロードの時代においてとても困難なことになっている
自分や相手が上げなくても誰かに上げられるかも知れず、プライベートがあるのかないのかすらもわからない
そんな時代だからこそ、誰にも知られずにいられる時間というものは貴重で、残らないからこそ価値があるものは多い
そう言ったものに対する価値観が重なる時、お互いの恋愛観というものも重ねっていくのかな、と感じた