「ラウラは何処へ行く?」トレンケ・ラウケン 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
ラウラは何処へ行く?
「ブルータリスト」(3時間35分)に「アラビアのロレンス 完全版」(3時間47分)と、今年3時間越えの作品は2本観ていましたが、本作はPART1(2時間8分)とPART2(2時間12分)合わせて4時間20分と、初めて4時間越えの長丁場となりました。ただ、いずれの作品も中入りがあり、本作に至っては別の上映回という体だったので、精神的にも肉体的にもリラックスして鑑賞出来ました。
初体験は4時間越えということだけではなく、アルゼンチン映画という点も初体験(厳密にはドイツとの合作ですが)。果たしてどんな雰囲気の映画なのか、興味津々で観始めましたが、正直序盤はちょっと退屈に感じられました。内容的には失踪した女性植物学者のラウラを、恋人のラファエルと同僚のエセキエルが探すという話でしたが、どうにも要領を得ず、またこれと言ったインパクトがあるシーンもなく、何の意味があるのか分からない流れが続いていた感がありました。ただ良くあるパターンですが、冒頭で現在のシーンを描いてから、過去と現在を行きつ戻りつしてそこに至る経緯を描く作品であることが分かり、最後まで観ると実は冒頭のシーンにもヒントが隠されていました。
また、テーマ性も多岐に渡っていて、人探しのミステリーの面もあれば、図書館の蔵書に隠された手紙の謎を追うミステリーの面もある。さらにはラウラとラファエル、エセキエルの三角関係を描いた恋愛物という側面もあれば、後半になるとエリサという女性に惹かれるラウラの姿を描く部分もある。さらには題名である”トレンケ・ラウケン”というアルゼンチンの地方都市にある湖で発見された謎の生物の存在などの話題もあり、SF的要素も含めて極めて複層的な構造をしている作品であり、物語が進むにつれて退屈さは雲散霧消しました。
さらに全11章立てにした物語の章と章の繋ぎ目の描き方もお洒落。曲の歌詞のワンフレーズが次の章の名前になったところなんかは、実にスマートでした。BGMの選曲も秀逸で、クラシックからUFO襲来っぽい不協和音まで、実に幅広いもので、観客の心理を上手に誘導していたように思えました。
また、主人公ラウラを演ずるのがラウラ・パレーデス、恋人ラファエルを演ずるのがラファエル・スプレゲルブルドというように、役者の名前をそのまま役名に使っているところも意味深。フィクションでありながらも、現実世界との繋がりを強く意識させる演出なのかしらとも思えました。
最終的には、「えっ、これで終わり?」って感じのエンディングでしたが、これまたラウラの心情や今後の行方を観客の想像に任せるものであり、観終わってからも脳裏に残る作品でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。