「娯楽映画は修羅の道」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5娯楽映画は修羅の道

2025年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

このシリーズも一応シリーズ全作劇場鑑賞しているし、これで最後という噂も耳にするので、映画ファンとしては見に行かない訳にはいきません(笑)

しかし、この“スパイ映画”というジャンルそのものが時代に即わなくなったのは東西の冷戦が終わった頃であり、そもそもが20世紀の時代で既に賞味期限は過ぎていて、21世紀になってまだこのジャンルをすること自体に無理があったのですが、スパイ映画の双璧であった本シリーズと“007”シリーズだけは頑張って(無理矢理)作って来た感はありました。
なので細かな事を言いだすと色々と粗探しも出来るのですが、基本的には「よくも頑張って続けて来たなぁ~」という賞賛の方が個人的には上回っています。
本作も約3時間という長い上映時間でしたが、面白く楽しませて貰いましたからね。

ただ、今のハリウッドの娯楽映画ってここまで詰め込んだテンコ盛りの豪華な作品を作らないと、劇場に来て貰えないのか?と言う位のボリューム過多の作品という印象は残りました。
スパイ映画の全盛期(1960年代)の頃の作品や、本シリーズでも3作目位までは2時間からそれ以下の上映時間でもっと気楽に見れた作品だった様に思うのだけど、最近の娯楽映画ってどんなジャンルでもどんどん長時間となり、サービス過剰なくらいのボリューム過多の作品が増えている傾向が見受けられます。
この原因って何なのかを考えると、やはりネット配信サービスという鑑賞環境の変化が大きいのでしょうね。
で、鑑賞対象も映画よりもドラマシリーズの方が主流になりつつあるので、どんなに名作でも2時間以下の作品だと物足りなくコスパが悪いという気になってしまうのでしょうか?なので、映画の長時間化に繋がっているのかも知れません。
でも、劇場鑑賞と配信鑑賞では鑑賞する環境条件が全く違うので、あまりにも長時間化傾向が進むと逆効果にもなり兼ねない気もします。

今月ロベール・ブレッソン監督の『抵抗(レジスタンス)/死刑囚の手記より』('56・仏)という旧作を家で鑑賞しました。これは映画史に残る傑作であり上映時間は97分で、所謂“脱獄モノ”でしたが非常にシンプルで濃密で、心に残る傑作と言われるのも十分納得できる作品でした。
映画を別作品と比較するのは好きではないし意味もないとは思っていますが、例えば本作と『抵抗』との印象の違いを例えると、本作はホテルのバイキングで食事をした様な満足感であり『抵抗』は高級寿司屋で好きなネタを数品食べた様な満足感といった違いを感じてしまいました。
私は食通でないのでどちらが良いかという問いかけは愚問ですが、映画に関しては今は高級寿司店よりホテルバイキング的な作品の方が人気があるのかも知れません。

話を本作に戻しますが、まあ“スパイ映画”自体が現在的なジャンルではないので消えていくのは仕方ないと思うのですが、サービス過剰の長時間化に関しては映画界(特にエンタメ業界)にとって、この傾向が続くのはあまり良い方向性ではなく茨の(自滅の)道のようにも感じてしまいます。
まあ、良くも悪くもトム・クルーズという人そのものがサービス精神の塊の様な人だからこういうシリーズになってしまうのでしょうけど、業界的に見るとこんな娯楽作品が増えるとしんどいでしょうね。
映画ももっと低料金で見れる低予算映画のファストフード店の様な、(昔の様な)劇場が増えてくれたらもっとバランスが良くなると思いますけどね。

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