「肉体主義礼賛」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
肉体主義礼賛
シリーズ八作目。
一作目のアメリカ公開は1996年5月22日だから
既に三十年が経っている。
主演の『トム・クルーズ』も当年取って六十二歳。
にもかかわらず、今回も走りに走り、
スタントも鋭意こなしている。
生身の、それも主演者が、
我が身を張って危険なスタントに挑むのに目を見張るのは、
古今東西を通じて変わらぬ心情。
『バスター・キートン』しかり、『ジャッキー・チェン』しかりで。
が、前者は70歳で亡くなっているし、
後者は50歳代でスタント・アクションを封印していること考えると、
猶更に『トム・クルーズ』の凄みが判る。
オハナシそのものは前作の続き。
「entity」と称されるAIが
主要国の核ミサイル発射基地を制圧し、
人類滅亡へのタイムリミットが迫るなか、
『イーサン・ハント』と「IMF」のチームが
それを阻止するのに
八面六臂の活躍をする、との流れ。
明日をも知れぬ身の諜報員ながら、
チームの誰をも失いたくないとの『ハント』の思いが、
結局は全世界を救うのに繋がるのは共通の主線も、
本作では総括の意味もあるのだろう、
過去作からの幾つかのシーンを抜き出し挟み込んでいる。
前作では薄めに感じた人間ドラマの描写も、
多少は厚めに感じられたのはそのためだろう。
一方で、それらのシーンでは説明調になってしまい、
緊張感が途切れる恨みはある。
そうした構成と、第一作での登場人物に再びの見せ場を与えたこともあり、
〔デッドレコニング PART ONE〕に続き、
本作も三時間近い長尺ものに。
もっとも、時間が長くなる主要因は
外連味たっぷりの主人公のアクションシーンに十二分な時間を費やすからで、
手に汗握るシーンの連続は
実尺以上の精神の消耗感を与える。
良いことではあるのだが・・・・、
出ずっぱりの『トム・クルーズ』の
長い長いPVを観せられている気分にもなる。
土曜の昼下がり。@川崎での鑑賞も、
キャパ五百人に近い劇場で五割強の入りの客のほとんどが、
おじいさん・おばあさん、おじさん・おばさんなのを考えると、
「スター システム」を含めたこの種の企画が、
日本の若い人には受け入れられなくなっているのだろうか、と
残念に感じたりもする。
〔トップガン マーヴェリック(2022年)〕で
前世代機の「F14」を活躍させたことを更に推し進め、
デジタルに対抗するアナログが
ここ二作に共通するテーマなのは明らか。
プロペラ機を使ったアクションのシーンに収斂するのだが、
脚本もそのクライマックスに寄せるため
組み立てられていると見てもよさそう。
あとあと反芻すれば、
瑕疵に思える設定は幾つかあれど、
スクリーンに観入っている間は、
そんなことに気を逸らさせぬ疾走感がある。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。