「先が見えない面白さ」異端者の家 なもしさんの映画レビュー(感想・評価)
先が見えない面白さ
あらすじ
地域の子供にもバカにされるモルモン教。宣教を担当するシスター二人は、パンフレットを請求した人物を訪ねるよう教会から指示を受ける。
訪問するとそこは郊外の一軒家。住人の中年男性は二人を家の中へと招き入れるのだった。
前提として「ヒュー・グラントが悪役のホラー」という情報だけ入れて鑑賞に臨んだ。
ところが、冒頭のA24のロゴで嫌な予感。また「一体何を見せられてるんだ」的な作品なのかと。(アリ・アスター関係映画に懲りた)
しかし、見進めていくと、物語展開が見えない序盤、トラブルに巻き込まれていく中盤は惹き込まれる感覚に久々にゾクゾクした。実に面白い。
ホラーの文脈・お約束は守られ、伏線らしきものもしっかり提示。
実に王道なホラーに仕上がっているため、ストーリーに集中でき安心して鑑賞できた。
音によるびっくり演出はほとんどないものの、後半・終盤でグロ演出はあるので、耐性ない方はご注意を。
宗教の成り立ち、モルモン教とは、スパイダーマン(1作目orアメスパ)、スターウォーズEP1などの
知識があるとより楽しめると思う。(劇中で説明されるので無くても大丈夫。)
以下ネタバレ
第一印象としては、「これユタ州で流せるんかいな?」というもの。
そのくらいモルモン教をディスりまくっている。(案の定猛抗議があったそう。)
でも、よく見ていくと、特定の宗教をディスっているのでは無く、「大体の宗教は模倣である」っていうのが
ヒュー・グラントの表向きの主張なので、日本の某巨大新興宗教も当てはまるなあ、と思って見ていた。
ヒューグラントはノリノリで悪役を演じている。決して暴力的では無く(序盤・中盤)、
理路整然(かなり自分勝手な解釈を下敷きにしてるが)と主人公達を追い詰めていくところがまた一段と恐怖を生む仕掛けになっていた。
先へ先へと変化していくトリッキーな屋敷の作りも良い。
途中で主役が交代するのも、予想していた展開が裏切られた感じでよかった。
黒髪の比較的世慣れした主人公だと、単純に力で反抗して脱出だと思っていたが、物語の「先が読めない感」が加速した。
最後は奇跡をひとつまみ、という演出も憎らしいがストーリーにスパイスを効かせていて合っていると思った。
屋敷からの脱出も、何故か出れた!ではなくちゃんと理由づけしているところも良かった。
ただ、終盤にかけてのヒュー・グラントの目的の陳腐さの開示や普通の暴力に訴えるホラーに成り下がったのは非常に残念だった。

