「無いものを数えるのではなく、あるものに目を向けて感謝しようと思えた」HERE 時を越えて おけんさんの映画レビュー(感想・評価)
無いものを数えるのではなく、あるものに目を向けて感謝しようと思えた
HERE 時を越えて
地球そのものの歴史のハイライトを見ているような作品。
正直、序盤は情報量が多くてついていくのに必死だったけど、最後のシーンでぐっと心を掴まれて、思わず泣いてしまった。
それぞれの時代ごとのセットの作り込みがとても細かくて、アメリカの文化や歴史に詳しい人、慣れ親しんでいる人にとっては、さらに深く刺さる作品なんじゃないかなと思った。
場面転換の方法にもさまざまなトランジションや仕掛けが使われていて、バリエーションが多いから「場面転換を楽しむ」という新しい感覚すらあった。
中でも構図を全く変えずに時代だけが変わっていくシーンは、本当にシームレスで、撮影・編集技術の高さに驚かされた。
テンポとしてはかなり早め。
マルチタスク的に物語が進んでいくから情報の処理に追われる感覚はあったし、予告などをまったく見ずに観に行った分、「この人は覚えておいた方がいいのか?」「これって伏線になるのか?」みたいな思考が常に走ってしまって、序盤はちょっと没頭しきれなかったかも。
だからこそ、あらすじだけでも軽く目を通して、どの時代がメインの軸になるのかを把握してから観に行くと、もっとゆったり楽しめると思う。
音楽もすごく良かった。
BGMの入り方、選曲ともに抜群で、時代ごとの空気感やキャラクターの感情をうまく後押ししてくれるような存在だった。
テーマとしては、「よくある人生」と一言で片付けられるかもしれないけど、その“よくある”の中にこそ、かけがえのない感情や出来事が詰まっているんだなと感じた。
将来に不安を抱えたり、過去を悔やんだり、自分の人生がベストじゃなかったと感じる日もあるけれど、そうやって揺れながらも積み重ねてきた時間の中には、ちゃんと素敵な思い出が詰まってる。
無いものを数えるんじゃなくて、あるものに目を向けて、感謝しようと思えた。
こういうテーマだからこそ、ぜひ日本を舞台にしたバージョンも観てみたいと思った。