「あらゆる手法を経験し尽くしたゼメキスが挑む時空を超えた定点観察映画」HERE 時を越えて 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
あらゆる手法を経験し尽くしたゼメキスが挑む時空を超えた定点観察映画
私たちが暮らすこの場所、この住居はいかなる歴史を重ねて、いま現在へと至り、未来へと続いていくのか。一見、物語にも満たない取り止めもない視点に思えるが、すでにあらゆるタイプの映画を具現化済みなゼメキス監督にとってこれくらいのチャレンジングな切り口でないと挑む価値はないのだろう。とは言え、目の前に展開するのは「定点観察カメラ前で織りなされる、時代を超越した複数の登場人物の群像劇」という言葉でいくら説明しても伝わらないシロモノだ。万人受けするとは言い難い。中にはピンとこなかったり、つまらないと感じる人もいて当然。が、慣れ親しんだ不動産の売却や、新たな物件の購入などを経験した人にとっては他人事と言えない内容かと思う。時空を超えたり、CGだったり、実写との融合だったりと、ゼメキスならではの一つの映像内に同時共存する幾つもの要素のタペストリーを見つめつつ、今ここに立つ喜びを噛みしめたくなる一作である。
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