劇場公開日 2025年1月17日

「アニメーションは命のないものに命を宿す技術だから…」ストップモーション 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アニメーションは命のないものに命を宿す技術だから…

2025年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ストップモーション・アニメーション作りをする主人公が心の闇に囚われていく様を、実際にストップモーション・アニメーションも交えながら描くホラー作品だ。
アニメーションという技術は、動かないもの動かすので、命を吹き込むマジックと呼ばれることもある。命のないもの、というものには死体も含まれる。この作品は普通の人形から生肉や遺体を素材として用いたアニメーション作りの狂気へと主人公が堕ちていく。
母親が有名なアニメーション作家で、自分はその手伝いに甘んじていることをよしとせず、母の入院をきっかけに自分の作品作りを始めるのだが、思うように面白いものが作れない。
自分は母と違って才能のない凡人なのか、という焦燥感が出てくるころ、奇妙な少女が語って聞かせる話に熱中し、その話をストップモーションで制作しようとするが、次第に少女の指示が過激になっていき、現実と妄想の境がなくなっていく。
絵のアニメーションよりも、ストップモーションは実在する立体物を用いるために現実感が強い。その現実感の強さ故に、虚構と現実の境がわからなくなりやすいとも言える。
選ばれた手法と作品の内容が上手く合致して恐怖を生み出していた。

杉本穂高