劇場公開日 2025年1月17日

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「何重にも楽しめる」満ち足りた家族 NUMAYAさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 何重にも楽しめる

2025年10月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

スピーディーな展開が気持ち良い!
韓国映画は社会派なテーマでもしっかりエンタメなところが大好き。
てっきりこの事故に関わる法廷劇かと思いましたが、
弁護士の兄と医者の弟…、二つの家族を通して人間性が問われる物語でした。

心理の変化が巧みに描かれていて、あたかも立場が逆転していくかのような過程に引き込まれました。
正義とは?責任とは?子供を守るということは?
それぞれの立場からの価値観に揺さぶられます。
更に弁護士や医者は社会的立場のある職業なので
その決断は子供の為?自分の為?と疑いたくなります。

「子は親を見て育つ」とは良く言ったもので。
個人的には嫌いな言葉なのですが。どうしても一番身近な家族の価値観に影響を受けて育っちゃいますよね。
兄は高額な報酬でもっともらしい理由をつけて真実をねじ曲げ、娘ともお金でしか繋がっていない。
弟は社会的な正しさを振りかざすだけで、自らは介入しない。
“正しい嫁”を押し付けられる母親を見て息子は育つ。

心理表現が素晴らしく、登場人物1人1人に共感できる部分が盛り込まれています。
とくに医者と息子の関係性の描き方が秀逸で、正義にかこつけて面倒なことから逃げる父親を見透かしている息子を、さりげなく表現する演出に痺れました!
俯瞰から撮られていた息子とのシーンが、水平な目線に落ちてくる演出も大好き。
赤いライトに照らされるシーンの心理は一番興味深いです。

真逆の立場になったように見えるけれど、
結局、一周回って、やっぱり人間は変わらないとも思えました。
兄の選択は、もっともらしい理由をつけた厄介払いだし
弟は衝動的な息子とそっくり。

兄弟の確執の物語でもあり。
弟は兄に対して拭えない劣等感と嫉妬を正義で誤魔化していた。
弟の職業が医者ってところもポイントで、医療現場では善人だろうが悪人だろうが患者の命は平等。
でも医者も人間なので、良くも悪くも患者に寄り添い過ぎると心が消耗してしまう…どこか俯瞰で眺めてジャッジするところは、おおいに影響していると思いました。

何重にも楽しめる映画。

NUMAYA
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