「死に向かって生きているからこそ、日々を大切に生きる」We Live in Time この時を生きて くまねこさんさんの映画レビュー(感想・評価)
死に向かって生きているからこそ、日々を大切に生きる
「We Live In Time この時を生きて」TOHO錦糸町で鑑賞。6/6の公開後3週目でようやく観れた。
アンドリュー・ガーフィールドとフローレンス・ピューのダブル主演作品。あのA24が真正面から“愛と感動”を描いた作品。
本作は単なるラブストーリー、よくある不治の病の映画ではなく、人生をいかに生きるのか、根源的な意味を深く考えさせる作品だった。
タイトルは「時間は有限である」「今を大切に生きる」といった意味合いであり、「我々はどのように生きるか」「どのように時間を過ごすか」という問いを投げかけてくる作品でもある。
美しいカットがとても多く、2人の生き様を克明に美しく記録したような撮影が印象に残った。時系列をシャッフルしたストーリーテリングも素晴らしかった。
自動車に轢かれた男性と、偶然に彼を轢いてしまい病院に担ぎ込んだ若い女性という突然の運命的な出会い。
我が道を行く強さを備えたシェフ👩🍳アルムート
(フローレンス・ピュー)と離婚して失意の底にいたシリアル会社勤務のトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)の演技合戦に魅了された。
奔放な女性と慎重で先を考えすぎる男性という、正反対のキャラクターなのに、実在のベストカップルにしか見えないほど、完璧なほどに相性が合っていた!
あの卵の割り方にシェフとしての有能ぶりが見えるとともに、種の継続性、卵を残していく事の大切さ、自分が生きた証を残そうとする彼女の人生観が描写されていたと思う。卵を割るシーンがラストに繋がるというのも胸熱…
個人的な感想だが、料理コンテストに勝利することに執念する一連のシーケンス、子供に対する自身の母親像へのこだわり(娘に最期まで強い母親像を見せたいなんて自己満足じゃない?)、夫に対するキツい言動にはあまり感心できなかった。
一方、いつも涙目の夫役のアンドリュー・ガーフィールドの人としての優しさには強く感心した。優しすぎる素晴らしい男性であり、その優しさこそが妻を支えている彼の”強さ”である。
料理コンテストの開催日と婚約パーティーが重なってしまい、準備していたパーティーの招待状を泣きながら無言で捨ててるシーンも忘れられない
(料理コンテストの練習に熱心になり過ぎて、娘の保育園のお迎えを忘れる妻の熱心さはどうかと思う)
あのガスステーションコンビニ店での突然の陣痛→出産シーンのリアルな演技が本当に凄かった。ピューさんは私生活では出産経験がなかったはずなのに、物凄い迫真の熱演!気がついたら胸が熱くなってた。
ラストのスケートリンクで、愛娘と夫に笑顔で手を振るカットが忘れられない。永遠のさようならだけど、彼女には、やり切った充実感のようなものがあったのではないだろうか。
直後、キッチンで、笑顔で玉子を割る愛娘と夫トビアスの姿は幸福そのもの。この後味は悪くない。
★忘れたふりをしているけれど、私たちは皆、限りある時間を生きている。死に向かって生きているとも言える。 残された限りある人生を辛い気持ちで過ごすよりも、愛情に満ち溢れた、充実した日々を過ごせる人生を選びたい。果たして自分は後者を選択できる強さを持っているのだろうか。
(追記)
この作品は観るものの数だけ、意見や感想も異なると思う。人の数だけ生き方があるはずだから。
他者と語り合うには良い作品だと思う。ただし、議論が白熱して、人間関係がギクシャクする可能性もあるかも…。