「惚れてまうやろ」We Live in Time この時を生きて sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
惚れてまうやろ
フローレンス・ピューがとにかくキュート。
これに尽きる。
ストーリーはシンプル。
だが、展開は「ちょっとでも複雑にみせるために、わざと時間軸を入れ替えているんじゃないの?」という悪口が聞こえてきそうなくらい、あっちこっちに飛ぶ。
これは「出会った相手の過去を少しずつ知りながら、相手をより理解していくという、私たちの日常のメタファー的な表現?」と思ってもみるが、どんな意図があってのことかは、制作者たちに聞いてみたい気がする。
ただ、一本道の時間軸の中で、説明的にエピソードが流れていくよりかは、コラージュ的に取り上げられるおかげで、その場面でのアルムートとトビアスの2人の関わりにグッと入り込めたのかもしれないとも思う。
おかげで、観ながら、パートナーとの出会いや、付き合いはじめのドキドキ感や、子どもが生まれた時のことをはじめとして、自分のこれまでのことが色々と重なって思い出された。
出てくる風景も美しく、いい鑑賞体験だった。
<ここから少し内容に触れますつつ、ちょっと思ったことを書きます>
その1
ラスト間際になって「映画としてポンコツでもいいから、アルムートが死なないラストになってくれないかな…」と、ちょっと本気で思ってしまった。自分でも理由はわからない。
未練たらしく「犬を飼っているということは、まだアルムートは生きていて、治療のための入院中かも」などと妄想してみたり…。
その2
今作、pg12になっていないところが個人的に驚いた。(ちなみに「国宝」は、pg12)
2人の口からセックスというセリフに出てきて、その行為も描かれるけれど、今は、どんな基準で映倫は判断しているのだろう。
相手の意思確認や避妊具の有無などもしっかりしているので、OKになったのか?…とか、ちょっと興味が湧いた。
性的指向とかも含めて、現代的な部分をケアしている映画にはなっていたし…。
その3
アルムートの父もガンで亡くなったのだろうか。
また、出てはこないが、トビアスの母も他界しているように見受けられる。
そうした、身内を喪失して、喪失後を知っている2人だからこそ、葛藤しつつも、互いや娘にとって、より最高の日々になるための苦渋の取捨選択をしていったんだろうと思うのだが、色々と切なかった。
特に、招待状を棄てる場面。悲しかったなぁ…。式は、きっと周囲の人たちも楽しみにしていただろうに…。