「いい話だった」死に損なった男 ツネさんの映画レビュー(感想・評価)
いい話だった
・冒頭から陰惨な映像で、すぐ殺すぞ!って言ったり言い出しそうな登場人物ばかりで、そんな社会が主人公の関谷一平を追い込んでいくのかと思ったら、幽霊が登場した辺りでコメディっぽく見えてきた。娘にまとわりついてる男を殺せ!って無茶苦茶な命令を言ったかと思ったらコントのアイデアを手伝ってくれたりして、つかめない展開のまま、気持ちが少し軽くなるラストでいい話だったなぁという印象。
・コントの構成作家?という仕事が特殊に感じられた。暮らしも良さそうで収入やどこまで芸人のコントに関わってたりするんなんだろうと気がそれてしまった。冒頭で割と追い込まれてる風だけど、自由な時間も多そうで色々と疑問だった。
・幽霊のお父さんがぶつぶつ言って飛び込みそうな雰囲気がすごくリアリティがある感じがした。実際に見たことはないので居そうだなぁくらいだけど。夜の都会でああいう格好の人がいたら怖い。自殺じゃなくて靴ひもがほどけて踏んでの事故死っていうのが地味に怖かった。賠償金、いくらするんだろうと思った。
・電車のホームで自殺で頭がいっぱいのまま未遂に終わった人が幽霊のお父さんが見えるようになっていた。もしそれなら、自分も生きてると思って幽霊を観ているのかもしれないと思った。
・ああいう形で無関係の葬式に行くっていうのが興味深かった。
・幽霊が主人公に若松を殺せと脅迫してきた辺りからわからない事が増えていった。どこまで物を触れるのか、触れないのか、主人公にあれだけ力をいれて触れるなら腕をとって刺せばいいと思ったのに何でしないのかなぁとか。できない理由ってなんだったんだろう。幽霊が犯罪者や殺人者だったならわからなくもないのだけど、国語教師を定年退職してて仕事で落ち込んだら奥さんに励まされたりするタイプの人間が急に殺せ!っていうのは悪霊になったみたいなことなのかと思ったら理性的だったりするし、と何で?っていう印象が凄かった。
・お父さんの靴の黄色が妙に印象に残った。
・三浦マイルドと練習した護身術が活かされなかったのが残念だった。きめようとして決められても良かった気がする。脱臼とか骨折とかされてもいい気がした。腹を自分で少し刺しただけって風に見えてしまった。
・ラストに家に押し掛けた若松との格闘で若松がなぜ熊手だったのかと疑問だった。前回、包丁持ってきてるんだから、もっとしっかりしたのを持っていかないとって思わなかったわけないよなぁ、若松ならと思ってしまった。
・幽霊のお父さんは後輩の作家が見えるまで、イマジナリーフレンドなんじゃないかと思った。