「もしもあなたが憑かれたら」死に損なった男 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
もしもあなたが憑かれたら
駅のホームから飛び降りようとしていた『関谷一平(水川かたまり)』は
一つ前の駅で人身事故が起きたため一生を得た。
その時に亡くなった男に興味を持ち、
葬式に行ったのは良いが
彼の幽霊に取り憑かれてしまい
離れるための条件を提示される。
娘にストーカーまがいの行為をしている
元の夫を殺してくれ、と。
ここでいきなり殺しの依頼はなんとも剣呑。
生前は国語教師だったとの男の設定は
いきなりこんな殺伐とした要請で良いのか。
近づかないようにしてくれ、とか
考え方はあるというもの。
おまけにこの幽霊、
のべつ幕なしに現れるのに加え、
『関谷』には肉体的なコンタクト、
例えば胸倉を掴むとか、
張り倒すとかが可能な設定。
なかなかの新機軸も、
だったら他にやりようがあるのでは、と
思わぬでもない。
そうした違和感は、最後まで付いて回る。
主人公が自殺を考えたのは、
殺伐とした世間への嫌悪と
「構成作家」の仕事に精神的に疲れてしまったから。
ゴールは見えず、次から次への台本のリクエストは途切れることなく
先も見通せない。
一方の取り憑いた側の『森口友宏(正名僕蔵)』が亡くなったのは
まるっきりの事故によるもので
この世には未練たらたら。
娘のことが心配でならず、成仏などもっての外。
そんな二人が、互いの利害のために協調する。
が、シチュエーションは真正の{コメディ}なのに、
笑える場面が少ないのはなんとも惜しい。
他の人には見えない設定は使い古されているので、
新たな可笑しさを生み出すのが難しいのは十分に承知も。
逆にしんみりとするエピソードの方が多く、
お笑い界から多くをキャスティングしているのが生きていない残念さ。
どうやって霊を振り払うのか、が
一つの見所も、望外の収穫が劇中に。
お笑いコンクールに参加する二人組「ピラティス」のために
『関口』と『(幽霊の)森口』が共作するコントの秀逸さ。
『インパルス・板倉俊之』の監修と聞くが
笑わせてほろっとさせる展開に、
つい涙腺が緩むほど。