「ヴェノムみたいなおっさん」死に損なった男 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴェノムみたいなおっさん
まったく関係ないのに殺人を命じてせっつく、うるさい、こんなモノに付き纏われたら迷惑以外のなにものでもない。いちいち「関谷一平!」とフルネームで呼びかけるし。
でも、このふたり、もうきっと離れられない。
主人公に憑き纏う、迷惑な幽霊に意外とお笑い作家のセンスがあり、主人公が彼を相棒として頼ってしまうって、「ブロードウェイと銃弾」みたい。
水川かたまりは、意外なくらいの好演。役柄にぴったりはまって、当て書きのよう。
チックが出たりするのも、物書きありがちそうでリアルな感じがする。
几帳面で部屋がきれいだし、神経質なんだろうが、他人にそれを押し付けることもない。
控えめで自分からぐいぐい行くことはないが、人との接し方に如才なく、空気も読んで失礼にならない態度で人付き合いができる、極力他人を傷つけないよう振る舞う善良なタイプ。そして、結構正義漢でかなりのお人好し。優しい、いいヤツなのだ。
たまりかねて綾に説明に行くって、当然ながら撃沈、綾さん、ドン引き。通報されなくてよかった。
包丁持って若松のアパートに行ったり、守口の自宅で若松と対峙したりは、どうなるのかと思ったが、一平ちゃんらしい決着の付け方で凌ぎましたなあ。
一平ちゃんが綾ではなく、さり気なく自分を支えて助けてくれる希の方に好意を持ったようで良かった。幽霊のおっさん、人を見る目がありそう。
気持ちが「死」に直面している人には、おじさんが見えるよう。
通じる回線が開くのか。
順風満帆に見えても、その人の内面は傍からはわからない。
芸能人の自殺が連鎖したことがあったが、ほとんどが仕事はあるしルックスが衰えたわけでもなく、どうしてあの人が、という理由がわからない人たちだった。
関谷一平は、かなり売れっ子構成作家で仕事も次々来る、やりたいことをして仕事に困らないのに何故死にたい願望が沸くのか、「憧れの位置にたどり着いたら何もなかった」からという。
ディズニーの「ソウルフル・ワールド」でも主人公がそう言っていた。「あれほど憧れていたのに、たどり着いたら何も感じない、普通だ」と。これは燃え尽き症候群とは違うのか。
「生き延びた」ことを噛み締めて、次の一歩を踏み出す関谷一平が良い感じ。
でも、中華屋でおじさんとネタの打ち合わせは止めたほうが良いと思う。
お笑い世界の内幕に結構時間を割いており、そちらも面白かった。
今晩は。コメントありがとうございます。
今作は、面白かったですね。監督が「メランコリア」の人なので、変わった路線だろうな、と思ってはいましたが。
今日は、世間はお休みなのですね。私の勤め先は旗日は関係なく稼働なので気付きませんでした。どーりで、朝の道が空いていたわけだなあ。では。