「パゾリーニの奇跡の丘」マリア 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
パゾリーニの奇跡の丘
パゾリーニの『奇跡の丘』
ルーニー・マーラのマリア様
(ホアキン・フェニックスがイエスだったような記憶・・・)
など、
様々な解釈がなされてきた聖なる物語。
本作『マリア』は、
ノア・コーエンが演じるマリアと、
アンソニー・ホプキンス演じるヘロデ王を中心に、
イエス・キリストの誕生を描いた作品である。
本作は、
福音書や宗派による解釈の相違をベースにしながらも、
ラストは観客に解釈の余地を残している点が興味深い。
鉄、青銅、金、要塞、神殿、そして劇場と都市、
繁栄の王ヘロデと共に、
映画史の中でも高難易度といわれる物語にチャレンジしている。
民衆の衣装は美しく、
まるで絵画のようでもある、
美し過ぎる事に賛否もあるだろうが、
エイジング処理を施すことによる安易さを避けている、
このスタンスは、製作チームの美学を感じさせる。
カメラワークも非常に巧みで、
ヨリとヒキのバランスが絶妙であり、
ナレーションや時代、歴史説明がないにも関わらず、
観客を自然と物語の世界に引き込んでいく。
セリフも少なく、
映像でストーリーテリングしていく技術の高さが光る。
民衆が街に集まっているシーンは、
なぜ人々が集まっているのか、
その理由を理解していても、
その意味は見る者を震えさせる。
日本人なら東方の三賢人の登場に期待してしまうが、
残念ながら出番なし。
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