「非常にハイクオリティで堅実なアニメーション。 しかし、声優のチョイスに疑問も…」雲のように風のように たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
非常にハイクオリティで堅実なアニメーション。 しかし、声優のチョイスに疑問も…
架空の帝国「素乾国」を舞台に、皇帝の妻となるべく志願した銀河という女性が経験する陰謀と戦乱を描く歴史ファンタジー。
「素乾国」だの「新周」だのといったいかにも中国史にありそうな王朝名、「イリューダ」や「黒耀樹」といったいかにも中国史に出てきそうな人名、「1638年に黒耀樹が〜」といった明確な年を明らかにしたナレーション等によって、初鑑賞時は完全に史実をもとにしたアニメーションだと思っていました。
調べてみたところ架空の国を舞台にしたファンタジーだということがわかり、いかにも歴史にありそうな、リアルに考えられたストーリーに驚かされました。いやー、完全に騙された。
ジブリの中核として大活躍していたアニメーター近藤勝也さんがキャラデザ・作画監督をしているだけあって、アニメーションのレベルは恐ろしく高い!
ジブリのキャラクターっぽい、元気いっぱいの明るい女の子が主人公なので、ほのぼのするような楽しいアニメかと思いきや、内容はかなりシリアス。
衰退した大国が反乱により滅亡するまでの様子が描かれており、盛者必衰の理を感じずにはいられませんでした。
アニメーションの動きで言うと、戦争の描写の迫力がとにかく凄い。本当にアクションが丁寧で上手いなー、と感心しました。
特に「垂戸」というトンネルに反乱軍を誘き寄せ、大砲で一掃するシーンのアニメーションは凄まじい!
あの場面の迫力はアニメーション史に残るクオリティだと思う。流石は近藤勝也さん!
後宮が舞台ということもあり、女の子が沢山出てきますがみんな魅力的。
個人的には銀河のルームメイト、江葉が一押し!
声優も井上瑤さんだし。
軍師っぽい立ち居振る舞いや気怠い雰囲気が最高です。
ただ一つ納得いかないのは皇帝であるコリューンの声優。
コリューンは中性的な見た目をしており、銀河も結婚するまで彼を女性だと思っていた。
確かに見た目は女性的。しかし、声が完全に男!
ここは女性声優を起用しておかないと、「コリューンって男だったのかー!」というトリックが全く活きない。だって初見の時から完全に男だと思ったし。
逆に何故銀河がコリューンを女だと思っていたのかが疑問。
声優である市川笑也が女形として有名だからこれでいけると思ったのかもしれないが、アニメと歌舞伎は違うから!!
完全に声色が男だから!この声優のチョイスミスにより、一番大事なトリックがダメになっているのが本当に残念。
総評としては、非常に丁寧に作られたハイクオリティなアニメ。
こんなに知名度が低いのが勿体ないと思える良作だと思います。
ジブリファンなら一見の価値有りかと思います。