「以下、ネタバレと言うよりエッセンスバレです。」ゴリラホール flushingmainstさんの映画レビュー(感想・評価)
以下、ネタバレと言うよりエッセンスバレです。
誰もが階段を登り続けられるわけではない。でも登り続けるなら、そいつの周りには必ず横で手を振る者や、下からエールを送ってくれる者がいる。時には支えあげてくれることもある。でも、上に登っていく者は決して後ろを振り向いてはいけない。上だけを向いて彼らに涙を見せることはできないのである。それが上に登るだけの才能を持った者、運を持った者、環境を得た者の“責任”なのである。
主人公・朝子とそのバンドのメンバーがキラッキラしてて眩しい。等身大の身近な若者だけど、我々は下から大声を張り上げて応援したくなる。レーベルのスカウトが言う。「どのバンドが売れるなんてわかるわけない。わかるのは売れてほしいバンドだけ」蓋し名言!同様に自信のなかった主人公が何をきっかけでオーディションに挑戦して上を目指そうとするのか、ポイントは描かれない。そこがいい!芸術の分野に於いて、エポックメイキングの瞬間なんてないのだ。いろんなものが絡まり合っての事なのだ。同様に主人公の彼氏・壱夜が音楽をあきらめて一般就職する経緯も描かれないのである。他人の曲をパクって出世しようと言う奴に元より成功はない。その彼氏に関してであるが…主人公朝子が、“上をむいて涙を見せない”実にエモーショナルなシーンがある。母親に(これも名言!)「何かを理由にするのはいいけど、何かを言い訳にしてはいけない」と言われ、壱夜の元を去る場面だ。生活の荒んだ壱夜の部屋を綺麗に掃除をして再出発の足掛かりをつけてから、鍵を郵便受けに落とす。胸が締め付けられるシーンだった。
これまで見た音楽映画の中ではビートルズの初期ベーシスト・スチュワートサトクリフを主人公にした「バックビート」がダントツだったが、勝るとも劣らない作品だと思う。この作品もカタルシスに溢れている。
バンドの演奏など音楽シーンがバリバリの本物だし、実はエンディングのシーンがピカイチだ。音楽を始める前、朝子が壱夜の部屋でギターを手にするシーンだが、ポツリと言うのである。「絶対曲なんて作る才能ないやろうなぁ」
この何でもない気弱な一言から朝子の歩みは始まったのである!
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