「犯人の動機以外は大満足の一作でした。」ブラック・ショーマン 黒伊邪那岐さんの映画レビュー(感想・評価)
犯人の動機以外は大満足の一作でした。
冒頭、プロジェクションマッピングや
殺陣も組み合わせたイリュージョンが、
映画ならではの映像美で迫力満点!
導入として素晴らしいし、主人公が
こういうショーをしていた人だと
伝わるのもいいですね。
後ろ姿の佇まいだけで誰が新郎だかわかる
圧倒的垢抜けなさのちびノリダー。
真世が妊婦に対して何か思惑ありげだったのは
後半の健太の女性関係への伏線だったのかな?
突然の訃報からの帰郷、駅にある町興しが
アニメの聖地巡礼なのが今時だなと思う。
主人公の神尾武史が登場からずーっと胡散臭い。
福山雅治ってこんな胡散臭い笑い方できるんだ…
胡散臭いが、家族に対する愛情がその芯にあることが
随所で感じられるのがまた良い。
捜査に乗り出す動機も、兄への兄弟愛だし
姪を危険に近づけたくないという家族愛も滲み出ている。
生瀬勝久演じる木暮刑事に対するピックポケットショーは、
予告編でもあったシーンなので、何かするだろうなと
目を凝らして見ていたら、しっかり抜き取る動作も見えたんで、
おおっ!実際にやってる!!と驚き!
流石に、真世との会食シーンの伝票を真世の腕時計に忍ばすマジックは、
映像マジック(カメラを止めてタネを仕込み、再撮影)だろうと
思っていたが、視聴後、インタビュー読んだら
全マジック吹き替え無しで実際にやったと載っていたんで
本当に!!とまたビックリ。
容疑者の登場人物も丁寧に描かれていて、誰が誰だかわかりやすかった。
(木村昴がガキ大将役で出てきたときは、
ジャイアンがジャイアンしてるって笑ってしまった。)
捜査シーンは、よくあるミステリ物の踏襲だが、
随所にマジシャンならではのコールドリーディングや
盗聴、隠しカメラといった技術が盛り込まれていて
他との差別化を図っていて良かったと思う。
解決編でまさか、冒頭のショーシーンが伏線になるとは思わなかった。
兄:神尾英一の声を合成し、自分の顔にプロジェクションマッピングしてなり切る。
それができるだけの技術があることは、冒頭に示されていましたからね。
犯人逃亡の後、警察に「追う必要は無い」と武史が言った段階で
飛び降りに対してマットも用意してあることは予想できましたが、
予想通りで逆に安心。
唯一しっくりこなかった犯人の動機。
別に単行本1巻の折り返しコメントとかで、
「ストーリーは共に漫画家を目指した亡き友人から
託されたアイディアを基にしています。」
とか言えば、勝手に周りがエモい美談扱いして
くれそうなのに、何を言ってるんだ?
と思いましたが、
そういう他人の心情の機微がわからない男だから、
絵が上手くても、ストーリーがパッとせずに
連載が勝ち取れず、恩師の性格もわからず、
高校でもほとんど友人ができず
意味も無い犯行に及んでしまい、
責任から逃れるために安易に死を選ぶ
と考えると、まぁ納得はできる。
英一が東京に行ったときホテルの他に寄っていた場所が
弟・武史のバーだったのは盲点。そうだよね、疎遠じゃないんだから
娘の真世のとこじゃなきゃ当然そこだよね。全然思い至らなかった(笑)
そして、殺人事件以外は何も解決していないのが
この作品の"ブラック"たる所以なのか?
街の復興を心底願っていた若者たちが頼りにしていた
大ヒット漫画は、作者が殺人犯になったことで
事実上、使用不能になり、
そのどさくさで処理しようとしていた
10億の裏金も使い途がなくなり宙に浮く。
真世が悩んでいた新郎の女性関係も
どう解決したかわからずじまい。
武史の私生活も謎のまま
不定期にしかやっていないバーの収入だけでなぜ生活できるのか?
あの解決のための大仕掛け、スタッフも込みで相当な額のお金が必要なはず
(フィクションだということは置いておいて)
サムライ・ゼンをなぜ辞めたのか?話題に出すと不機嫌になるのはなぜか?
全てが闇の中。
メタに考えれば続編への引きかな?とは思うが、
あんな話術に長けた元マジシャンがあからさまに怒気を発するのは、
逆に何にもないのかもと邪推してみたり。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。