「マジシャン福山の小タイム!」ブラック・ショーマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
マジシャン福山の小タイム!
東野圭吾と福山雅治の新たなタッグ。
共演に有村架純。監督は『コンフィデンスマンJP』の田中亮。
期待値充分。さあ、ショータイム!
結婚を控えた真世。ある日突然、父の死を知らされる。
地方都市にある自宅で。父は殺された可能性が高いという。
人に恨まれるようではなかった父。
何故父は殺された…?
ショックと同等に、“何故?”や真相が知りたい。
そんな彼女の前に現れたのは…。
世界で活躍するマジシャンにして、叔父の武史。
武史はマジックを駆使して、自らの手で犯人と真相を暴くという…。
科学ではなく、マジックで殺人事件の謎を解き明かす。
なるほど、確かに題材としては面白い。
マジシャンは嘘を見破れる。マジシャンに見破れない嘘はない!
…と断言する武史だけど、私はちとこの台詞に違和感。
マジシャンは人の嘘を見破るのではなく、寧ろ人を欺く側。
だから事件解決側ではなく、マジックを駆使して完全犯罪を企む容疑者とかだったら強敵として話が盛り上がりそう。
それに科学で対する湯川。
…いやいや、だったらそもそも作品が成り立たないか。こりゃ失敬!
マジックでどう殺人事件の謎に迫るか。それが最大の見せ場。
あっと驚くマジック謎解きを…と期待したら、
武史が見せるのは刑事から手帳やスマホを拝借したり、目の前で自分の免許証を消してはまた出したり、兄の棺に花びらを舞い散らせたり、クライマックスの仕掛けなど、スリか詐欺師かエンターテイナーのようなパフォーマンス。
あれ…? あまり謎解きにマジックが使われてなかったような…?
私の気のせい…? 欺かれてた…?
人を挑発したり、上から目線だったり、やる事言う事全て俺様。
そんな武史のキザキャラが好きになれず…。福山のちょいチャラ気取った演技が拍車をかける。
勿論、そんな表向きに見せて内面は…。マジシャンは手の内を見せない。
結局最後までこのキャラに乗れなかったなぁ…。
「イッツ・ショータイム!」の決め台詞もいかにも流行らそうと見え見えで鼻に付く。
湯川ならこう言うだろう。
実にウザい。
真世の殺された父・神尾は教師。真世も教え子だった。
真面目と穏やかを絵に書いたようだった父。
父親が担任だった事から真世は“盗聴器”など言われてたが、神尾自身は教え子たちから慕われていた。
真世の同級生のみならず、別の学年でも。
卒業しても相談事を頼まれるほど。
犯人は顔見知りの可能性が高い。
それほど人付き合いが広くなかった神尾。強いて言うなら教え子たちくらい。
という事は、犯人は教え子たちの誰か…?
何かに巻き込まれた…?
顔見知りという点では武史も。警察は無礼な武史をマーク。
舞台の町は紅葉が美しく、あの旅館も良さげ。
ロケ地は何処なんだろう…? 行ってみたいわ…。
しかし、住んでる者たちからすれば、何の取り柄もない町。
さらに、コロナで大打撃。
コロナが鎮まりインバウンドと言われても、この町には無関係。外国人観光客どころか日本人観光客すら来ない。
このまま廃れゆくのか…?
そんな町に、救世主現る!
教え子の一人、釘宮。
学生時代は目立たぬ生徒だったが、得意の絵を活かし、今や人気漫画家に。
故郷の町を舞台にした漫画はアニメ化もされ、世界中で大ヒット。
この漫画の人気にあやかって、町興しやタイアップ。
自然な流れと言えば自然な流れなのだが、釘宮を何とか取り込もうと、この町に住み続けている同級生らが群がってくる。
中には、当時のいじめっこや釘宮の事を相手にもしなかったであろうヒエラルキー上位まで。先生!先生!…とおべっか使って手の平返し。
町の事を思ってだが、教え子たちの欲や思惑や睨み合い。
生徒たちの中には問題を抱えた者も。加えて、漫画の利権争い。
そして、漫画のある秘密…。
神尾が殺された理由は、それを知ってしまった故に…。
犯人は無論、教え子の一人。キャスティングで察しは付くが…。
学生時代応援してくれた亡き親友との友情を謳うが、もし本当に亡き親友の事を思っているなら、出版社に掛け合って親友の名を原作者として残してもいい筈だ。それをせずに自分のものに。
挙げ句、秘密を知ってしまった先生を…。
『ガリレオ』シリーズの犯人は悲しみや同情も誘うが、自分本位であまりにも愚か。亡くなった先生も浮かばれない。
武史のキャラがいまいち好きになれない。
マジックがあまり謎解きに活かされていない。
犯人も同情の余地ナシ。
『コンフィデンスマンJP』の田中亮監督の手腕に期待していたのだが、どんでん返しや鮮やかさやトリッキーさにも欠ける(最もこれは脚本家の違いかな…?)。何か話自体はよくある殺人ミステリー。
つまらなくはなかったけど、『ガリレオ』や『コンフィデンスマンJP』には及ばず。
気が付けば、やっぱ有村架純可愛いなぁとか(でも今回、役柄やそういう演技なのかちょっと棒演技だなぁとか)、
仲村トオルと伊藤淳史ならこの二人で医学で事件を解決…とか、
生瀬がまたとんちんかんな捜査を…とか、
木村昴、まんまリアルジャイアンじゃん…とか、
そんな事を思いながら見てた。
原作がシリーズ化されているので映画もシリーズ化を狙っているだろう。
武史のある台詞に、作り手側の魂胆が見え見え。
幾ら払える?
共感ありがとうございます。
武史のキャラがいまいち好きになれない。
マジックがあまり謎解きに活かされていない。
犯人も同情の余地ナシ。
とっても身も蓋もないおっしゃり様ですが、同感です 笑
マジシャンは嘘を見破るのに長けている、というのは説得力あるんで当然心理戦かと思いきやさほどでもなく。
大掛かりなセットと大仰な演出は何のために必要だったんだっけ?とストーリーを思い返しても良くわからないんです。
共感ありがとうございます!
東野圭吾ヲタクとしてはガリレオが王道なんですが、福山雅治もちょっと老け気味になってきたので、この新シリーズは当たりだと思いました。
有村架純も以前のキャピキャピ系から卒業して、大人の演技が上手くなってきたし、何よりも叔父と姪っ子のコンビという設定が凄く新鮮で、既に次作が気になってます。



