「詰め込みすぎてイマイチ」九龍ジェネリックロマンス 赤足さんの映画レビュー(感想・評価)
詰め込みすぎてイマイチ
九龍城砦を思わせる“ジェネリック九龍”を舞台に描かれる本作は、ノスタルジックでありながらSF的な恋愛譚として立ち上がる。雑多で退廃的な街並みと、上空に浮かぶ謎の存在「ジェネリックテラ」が交錯し、現実と虚構の境界は徐々に曖昧になっていく。
不動産会社で働く令子(吉岡里帆)は、記憶を失ったまま日常を送るが、先輩の工藤(水上恒司)や街に潜む謎との関わりを通じ、自分の過去と向き合わざるを得なくなる。真実を探し、もがき苦しむ令子の姿は、観る者に“自分は誰なのか”という問いを投げかける。
映像は懐かしさを纏いながらも、幻想的で不安定な質感を持ち、独特の世界観を形成している。美術や空気感は過去の記憶を呼び覚ますようでありながら、同時に未来的で異質な空気を孕み、そのギャップが強烈な印象を残す。吉岡里帆の繊細な演技もまた、この曖昧さと切なさを支えている。
ただ、原作の濃密な設定を凝縮したことで、世界観や背景の説明不足を感じる部分もある。結末も多くを観客に委ねる形で、人によっては消化不良に映るかもしれない。しかしその曖昧さこそが、懐かしさと過去の影を重ね合わせ、言葉では言い尽くせない余韻を生んでいる。
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