劇場公開日 2025年2月7日

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「画面を支配する阿部寛力とリメイク版ならではの独自展開」ショウタイムセブン 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 画面を支配する阿部寛力とリメイク版ならではの独自展開

2025年12月30日
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鑑賞方法:TV地上波

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【イントロダクション】
2013年の韓国映画『テロ、ライブ』を阿部寛主演でリメイク。ニュース番組を降板させられ、ラジオDJとして活躍する元キャスターのもとに、爆破テロを予告する犯人から電話が入り、前代未聞の生中継が始まる。
監督・脚本は、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(2023)の渡辺一貴。

【ストーリー】
4月1日。TV局・NJBの人気番組「ショウタイム7」が始まった。
時を同じくして、ラジオ局ではかつて「ショウタイム7」の人気キャスターとして活躍しつつも、左遷されたラジオDJ・折本眞之輔(阿部寛)の「トピック・トピック」が始まっていた。折本は毎回視聴者と電話を繋いでその回毎のトピックについて語り合うのだが、その日最初に繋がった電話相手“ウスバカゲロウ”は、トピックの内容を無視して、世間を騒がせている大和電力と政府との黒い関係を嘆くものだった。

音楽を挟んでその場を収めた折本だったが、ウスバカゲロウは折本と話をさせるよう要求する。電話に応対した折本に対し、ウスバカゲロウは江頭区にある大和電力の発電所に爆弾を仕掛けており、これから爆破すると予告する。その発言をエイプリルフールのネタや頭のおかしな相手の虚言と判断した折本は、暴言を浴びせて電話を切る。しかし、程なくして大和電力発電所が爆破される。

折本は、警察に電話する事を躊躇い、この機会を利用する事を画策する。折本は、自らを左遷した「ショウタイム7」のプロデューサー・東海林剛史(吉田鋼太郎)に録音していた犯人の爆破予告を特ダネとして売り込み、自らを「ショウタイム7」に復帰させる事を条件に、犯人との電話を生中継させるよう要求する。

犯人との交渉役を取り付け、番組に復帰した折本は、犯人との通話の生中継を開始させる。犯人は、大和電力社長・四方田勇と内閣総理大臣・水橋孝蔵が隠蔽した6年前のGサミット会場の拡張工事の際に起きた事故の隠蔽に関する真実の公表と、彼らの謝罪の要求してくる。

やがて、事件は多くの人々を巻き込み、何故折本が交渉役に指名されたのか、隠された真実が明らかになっていく。

【感想】
韓国のサスペンス映画を日本版リメイクするというのは、国を挙げて映画製作に励む韓国と比較して予算面で大幅に劣ると思う(実際、爆破テロの規模と演出の差は明らか)が、犯人との緊迫した攻防戦をスリリングに描く様子、終盤でオリジナル版とは異なる真相が明かされ、独自のルートを突き進んで行く展開は、オリジナル版にも引けを取らない出来に仕上がっていると思う。

邦画らしい演者のオーバーな演技(特に、番組プロデューサー役の吉田鋼太郎、キャスター役の生見愛瑠)は気になるが、主演の阿部寛が終始緊迫した表情を浮かべて画面を持たせている様は流石。
そんな阿部寛力というべきか、折本がスタジオの爆破で混乱する中、降板させられた番組に復帰して現場をコントロールする姿にかつての「番組の顔」としての作品上の頼もしさと同時に、「俳優・阿部寛」の頼もしさも感じさせる。

本作独自の演出として、視聴者参加型の“世論調査”を実施して、総理が謝罪するか否か、折本が収賄疑惑の真実を公表するかを投票させる演出が成される。事件を通して視聴者、そして我々観客を巻き込むという、「他人事ではない」とする攻めた演出が光る。
ラスト、全ての真相を自白し、全てを失って尚、権力との癒着から解放され報道として真実を明らかにしてきた2時間の攻防を「楽しかった」と表現し、我々観客に「安全な場所で楽しめたでしょ?」と語り掛ける折本の狂気が気持ち良い。
そして、最後の視聴者投票によって、折本は自らの命を絶つ決断をし、爆弾のスイッチを押す。だが、そんな大事件すら、同時刻に発生したロンドンの地下鉄での同時爆破テロに瞬時に掻き消されていく。

他にも、犯人の高校時代の担任教師が緊急出演し、犯人の素性が中盤である程度明かされる点もリメイク版の特徴。犯人を刺激して爆破殺害されたかと見せ掛けて、実は共犯者であり親族というのは、序盤の伏線が分かりやす過ぎたきらいはあるが凝っていて良い。
また、犯人役の繁藤役が錦戸亮というのは出来過ぎ感もあるが、その演技力は素晴らしい。

オリジナル版では主人公が絶望の内に爆弾のスイッチを押して、倒壊するビルと共に最期を迎えるが、リメイク版の本作では破滅の中にも「真実の追求」という快楽を堪能して最期を遂げる折本の狂気が織り混ざっており、主人公の辿る結末としてはこちらの方が好みである。

しかし、ラストで何処ぞの放送局よろしく世間の一大事にも臆せずPerfumeの新曲を披露し、その映像がそのままエンディングに繋がっていくという演出は冷めるしやり過ぎである。せめて、画面が暗転してテロップが流れる中でPerfumeの主題歌が掛かるというのなら、まだクールな演出として受け入れられたのだが。
また、この手の報道番組がゴールデンタイムの午後7時に放送されているというのは、些か現実味が湧かない。こういう内容の番組は、ゴールデンタイムでも午後9時か10時辺りが一般的だろう。

犯人の要求で呼び出す相手が、大統領から一企業の社長に変更されているというのは、最初は大幅なランクダウンを感じさせる(失礼)。だが、やがて犯人の要求が社長から首相へと変わる展開の現実味としては、リメイク版のこちらの方が上か。
折本と伊東の関係が、オリジナル版では対応するキャラクターが元夫婦という設定だったのに対して、本作ではあくまで仕事仲間程度に留められている。男女の恋愛関係を廃したのは、メディアにおける「真実の追求」姿勢を全面にフォーカスした作風故か。

【総評】
オリジナル版の作風に敬意を払いつつ、日本独自の地域性や国民性を攻める演出を盛り込んで切れ味鋭く仕上げた本作は、折本の言うように“ショウタイム”と呼ぶに相応しい一作に仕上がっていたと思う。

オリジナル版に劣る部分も多々あるが、個人的にはリメイク版の本作の方が現代的・日本的であり好みである。賛否両論の様子から劇場鑑賞を見送ったのだが、本作は劇場鑑賞しても良かったなと感じさせられた。

緋里阿 純
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