「作者の力量が足りないからってテキトーなことやっちゃ駄目」49日の真実 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
作者の力量が足りないからってテキトーなことやっちゃ駄目
東本願寺を歩いてるなあと思うと清水寺の辺りを歩いてて、どんだけ歩いてんだこの人と思うのね。
この辺で『地元京都でやり遂げなくてはならないことがある』みたいな台詞がくるんだけど、京都が地元の人が、なんで京都で共通語しゃべってんだっていう。京都弁でしゃべるよね。
それで話が進んでくと分かるんだけど、これ、戯曲だね。
シェアハウスの共通スペースだけで話が進む一幕劇になってんの。
だから舞台が京都であることに必然性がないんだよね。どこでもいい。どんな事情で京都を入れ込んだんだろう。
それでシェアハウスに住んでた優子が自殺してしまったので、その49日にみんなで集まって思い出を語る会が開催されんの。
一幕劇で進んでくけど、人の出し入れうまくて、飽きさせないようになってんなあとは思ったよ。
回想に入るところもカット切り替えずにつなげてて面白かった。
色々やって、どうも優子は自殺じゃないぞってなってくのね。
生前に優子が書いたノートが見つかったんだって。
それで優子は死ぬ三日前にパンチョに暴行されてたことが分かるの。
いや、酷いな。
作者の都合で登場人物が酷い目に遭う話が好きじゃないんだけど、これ、完全に作者の都合なんだよね。
しかも「暴行を気に病んで自殺したと思ったでしょ。ちがいまーす」ってやりたいためだけに暴行させてるからね。酷すぎる。
観てても「これはミスリードでしょ。早く次いって」と思ってたからね。
この辺で原田龍二さんが、お父さん役で出てくるんだけど、これもさ。
「原田さん出てくださいよ」「いや、出たいけど役ないでしょ」「そんなの、うまいことシーン足しますから」って感じで、出してるよね。全く意味ないもんね。
うまいことシーン足すなら、意味あるように足そうよ。
そして疑われてないのはかおりだけになったから、真犯人はかおりだって分かんのね。
『どうして女の人の声って分かったの?』という古典的なやり方でかおりは自白に追い込まれました。
かおりは優子を妬んでたから、それもあって殺しちゃったんだって。
殺人の動機って難しいね。その程度では人を殺さないでしょって今回も思ったな。
そして後ろから首をしめて殺して、その後で自殺に見せかけてるんだけど、他殺の場合、吉川線出るからね。京都府警には沢口靖子が率いる科捜研がいるんだから見逃さないよ。49日まで待たなくても、自殺認定はされないから。
そんなヘンテコ脚本ではあるんだけど、浅川梨奈が真剣に演技すると、つい感情移入しちゃうね。浅川梨奈は意外にすごい役者だと思うよ。
この話、客席が関係者だけでうまる小劇場でやったら、「このホン、すげえな!」って言われるレベルだと思うの。
でも、そのレベルで商業映画にしちゃうと、ちょっとね、ツッコミどころが多くなっちゃう。
暴行とか殺人とかの重い話を入れられる作りになってないから、舞台設定をお通夜ぐらいにして、関係者集めてかおりを自白させて改心させて、暴行設定もなしにして、そこで『実は優子、生きてます!』でハッピーエンドみたいにした方が良かったんじゃないかな。
あと、戯曲のつくりでいくなら、徹底してワンカットでいっても良かったよね。
回想で半端に別の場所でのシーン入れちゃってたけど。
優子が暴行されんの酷いと思ったけど、演じた冨手麻妙が濡れ場っぽいシーンやってもいいですよってことでいれたのかな。そんな事情で酷い目に遭わされたら、登場人物がほんと可哀想だね。
まだ『ぶぶ漬けどうどす』やってる映画館だったから、ファーストカットでスクリーン間違えたかと思いましたわ。
いや、予告でも毎回連想してたんで実際は大丈夫でしたけど。笑