「レベルが高い」雪子 a.k.a. Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
レベルが高い
タイトルにa.k.a.が付くぐらいだからラップの映画だろうと思って観るんだよね。
でも、なかなかラップしないの。
小学校教員として悩む雪子先生の日常を描いてくんだよね。
ここがしっかりと、うまく描かれてて、つい観ちゃうの。
題材にラップを使ってるからね、劇中でもラップやってワーッて盛り上げれば、それで観られるんだけど、それをしないのね。それで観せるのすごいよ草場監督。
雪子先生はMCサマーとしてラップも始めてたんだけど「バトルはまだ早いかな」って思ってんだよね。
でもある日、練習してる公園に行ったらアザミさんが来てて『じゃあ次あんた』って指名されちゃう。初級者だろうがなんだろうがお構いなしっていうのがいいね。そしてMCサマーはボコボコにされる。容赦なし。
アザミさんのキャップは47だったね。New Eraだけじゃないんだな。
雪子先生は付き合ってる彼との結婚も考える時期なんだけど、この彼がなかなかだね。
いきなり両親に合わせてみようとしたり、婚約指輪を買おうとしたり。
まず、はっきりとプロポーズしろよ。そこからだろ。照れくさいみたいな感じで逃げちゃ駄目なんだろうな。
それでその彼は『ラップやってる雪子は、なんか違う』って言っちゃうんだよね。
雪子先生は「ラップやってるときだけが本当の自分だ」と思い始めたときだから、彼は「俺は本当のお前は好きじゃない」宣言出しちゃってんの。雪子先生も「何年間も付き合ってきて分かり合えないってどういうことなんだ」って思うよねそら。
彼は電話で『歌って』って言われても『練習する。また今度』ってエエカッコしいなんだよね。かっこ悪くていいから、いま歌ってくれよって言ってんだよ。
この辺の描き方がうまかったな。
そしてMCサマーは故郷の長崎でラップバトルへ。
ここのラップも良かったね。MCサマーは「ディスるのも、なんか」と思ってたから、ディスらないんだよね。自分のことだけ言う。対戦相手もディスらない。「あんたカッコいいよ、でも負けない」って感じで。
ラップの内容も、郷里を離れた人と残った人のやり合いで良かった。
そして最後は不登校児が弾くピアノでラップして大団円へ。
父親役の池田良が、スカしたことずっと言ってんだけど、息子が校舎に入ってくと涙を落とすのいいね。
草場監督は人間を描くのがうまいんだろうね。
雪子先生をしっかり描いてきた。
恐らく、ラップを使わなくても、描けたんだと思う。
でも、そこにラップを乗せて、すごい作品に仕上げた。
設定が上滑りするんじゃなくて、しっかりしたベースの上に乗ってる感じで、レベル高い作品だなと思いました。
草場作品また観たい。