劇場公開日 2024年12月7日

「作者の傷口から今もまだ血が流れているような作品だった」どうすればよかったか? takkongさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5作者の傷口から今もまだ血が流れているような作品だった

2025年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

家族のひとつのあり方に、誰も簡単な論評を加えて良いわけではないと自らを戒めた。

というのは、この映画はいとも簡単に、父親が,母親が、親族が、この弟が、医者が、世間がと、その不作為を責めることを簡単にできてしまうから。そして、その誰かを責めた瞬間に、この映画のもつ視点の総体が,失われてしまうから。
この映画の感想は第一に、なんともいえない、と重く口から言葉を漏らすことが正しい作法だと思う。それ以外の断罪は、目撃することに心が耐えられなかった証拠にしかならないのではあるまいか。

どうすればよかったか。
これは、この家族当事者である映像作家のこの弟からすると、人生の最後まで抱え続ける問いになるのだろう。しかし一面では現実的にはすでにほぼ終わってしまった事案であるともいえる。そしてその最後の後片付けをする時にはなにをそこに改めて感じるのかを視聴者としては想像して、むしろ作者のその思春期から抱き続けた傷の縫合を自らやらざるを得ないこれから訪れる総括の時を思うと、視聴者としては同年代の彼に、しっかり生きてくれとエールを送りたくなるのだ。

なんともいえない、そしてその次には、やりきれない。
だが、この映画は歴史の中で残る必要がある。利発で美しい少女の頃の姉の魂と、その自慢の優しい姉を思っていた時の弟の心は、必ずどこかで誰かに意味をなすだろう。それを必ず見届けてほしいし、この映画を見た、おそらく多くの医療福祉の関係者は、これを無駄にしてはいけないのだと思う。その時に、やはり簡単な結論を出すようでは、いけない。

星は4.5にした。この映画に、星5をつけても、監督はうれしいか?だから4.5にした。

takkong