「悪い子リストに載っていそうな人ほど、この映画で心が洗われるかもしれません」レッド・ワン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
悪い子リストに載っていそうな人ほど、この映画で心が洗われるかもしれません
2024.11.9 字幕 TOHOシネマズ二条 IMAX
2024年のアメリカ映画(123分、G)
誘拐されたサンタを助けるために共闘する助手とお尋ね者を描いたクリスマスファンタジー映画
監督はジェイク・カスダン
脚本はクリス・モーガン
原題の『Red One』は「サンタのコードネーム」のこと
物語は、捻くれ者の現実主義者ジャック(クリス・エヴァンス、幼少期:ワイアット・ハント)の幼少期のエピソードが綴られて始まる
ジャックは「サンタはいない」と思っていて、いとこのジェネ(ランス・ダフィー)たちに「親が買ったプレゼント」を見せつけた
叔父のリック(マーク・エヴァン・ジャクソン)はジャックを嗜め、その場でいとこたちの夢が壊れることはなかった
それから30年後、ジャックはならず者として暗躍し、金の為なら何でもする男になっていた
ある依頼を受けたジャックは、NOGAの職員のIDを拝借して侵入し、地震感知へのハッキングを試みる
そして、得た情報をクライアントに流して金を受け取るのだが、その位置情報はサンタ(J・K・シモンズ)たちがいる北極ドームの境界線だったのである
依頼者たちは北極ドームの位置を特定し、侵入してサンタを誘拐してしまう
北極ドームの管理をしているカラム(ドウェイン・ジョンソン)は犯人を追うものの、追いかけた雪上車はおとりで、まんまと逃げられてしまった
クリスマスまであと24時間、サンタを見つけられなければクリスマスが中止になってしまう
そこでカラムは、MORA(神話監視復元局)のゾーイ(ルーシー・リュー)と協力体制を取り、犯人の行方を追うことになったのである
映画は、ジャックのハッキング行為があっさりとバレて、半ば強制的に捜索に付き合わされる様子が描かれる
データの仲介人テッド(ニック・クロール)にたどり着いた二人だったが、彼から驚くべき名前が上がってしまう
それは、グリラ(キアナン・シプカ)というクリスマスの魔女で、彼女はサンタの義理の弟クランプス(クリストファー・ヒヴュ)の元カノだった
そこで、グリラを探すために、一行はクランプスのいる城へと向かうことになったのである
物語は、ジャックとその息子ディラン(ウェスリー・キメル)の和解がベースにあるが、どちらかと言えば慕っている息子を一方的に突き放していたジャックが向き合うという流れになっていた
それによって、スノードームの囚われから解放されることになっていて、さらに二人の様子を見ていたカラムは「失ったもの」を取り戻すという流れになっていた
子ども目線だと、妖精とか怪物が出てきて興奮するファンタジーアクションだが、大人目線だと、教訓も社会風刺もない味気ない作品だったと思う
悪い子リストが過半数を超えたというものの、それが単純に悪者が増えただけなのか、少子化の影響で子どもの絶対数が減ったからなのかもわからない
悪い子リストは大人の比率が上がれば割合が増えるのは必至で、そう言った問題も加味しつつ、大人が子どもだった頃の純粋さを取り戻すにはどうするかという問題提起があっても良かったように思えた
それによって、グリラが行おうとしていた「罪人浄化」に対する人間の抵抗を描き、もっと大規模なものになっていけば、ファンタジックでエモい物語になっていたのではないだろうか
いずれにせよ、ファミリー向けの感動作としては一定のラインには到達しているので退屈はしないと思う
IMAXで鑑賞したが、画質や音響が良いから楽しめるという映画でもなかった
サンタを信じなくなるのが現実を知るからなのか、罪を犯して行くからなのかはわからないが、そう言ったものの逆転現象としての、「大人の中にあるピュアな少年の想起」が描かれているので、それが全世界に波及する理想郷があっても良いのだろう
サンタと同じように、この映画で描かれる理想を信じるかどうかは人それぞれという感じで、ある種のリトマス試験紙としての意義が込められても無意味ではなかったのではないだろうか