「クリアにならない世界を、自分の頭でクリアする楽しみ」THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE nomさんの映画レビュー(感想・評価)
クリアにならない世界を、自分の頭でクリアする楽しみ
銃声や音に対する反応が印象的だった。
深津絵里は音で気絶するはずなのに気絶しない。
一方、シンガーは銃声を受けてもびくともしない。
「同じだけど同じじゃない」──この反復に、映画全体の仕掛けを感じさせられる。
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物語の始まりではオダジョーが「人間」として撃たれ、ラストでは池松くんが撃たれる。
繰り返される構造なのに結末は微妙に違う。
まるでどこかのルートが変わったことで、別の可能性に分岐したように思えた。
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お父さんの女装目覚めは「本世界」の出来事として描かれる。
魚、海、のどぐろ──「雄性先熟」という言葉が頭をよぎる。
世界はひとつではなく、海の中と地上を行き来するように、境界が曖昧にゆらいでいる。
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タコ焼き、小さいおじさん。
見えないだけで、いろんな世界とつながっている感覚。
もしかして、私たちのいる場所も2人がいたグツグツしていた「タコ焼きの中」なのかもしれない。
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小西さんのエピソードも忘れられない。
ボランティアの前はただのサラリーマン。
自殺しようとした瞬間、雷に打たれ、オリバーとフュージョン。
そこから「スーパーボランティア」へと変貌するくだりは、ありえないのに妙に説得力があった。
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そして驚いたのは、『クウガ』のグロンギ役だった俳優さんの出演。
思わず「えぐ!!!」と声が出た。
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インド映画のように突然踊り出すシーンもあり、意味がわからなさすぎて最高。
時効警察だって、熱海の捜査官だってそうだったじゃないか。熱海の捜査官は神話を極めたら理解できた。今回もこちらの知識量と繋げられるかの問題。
「わからないからつまらない」ではなく、「わからないからこそ好きになれる」映画だった。
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観終わった後に「クリアにならない」と言う人もいるけれど、
この作品は「自分の頭でクリアにする」映画だと思う。
もし誰もが同じ感想を持ってしまう作品だったら、こんなに面白くはならない。
小西さんがフュージョンしたのはオリバーじゃなくて、オリバーの父親であるルドルフですね。
ルドルフが現実世界で撃たれた(失踪)事実が輪廻転生して、オリバーが撃たれる〜輪廻転生〜最終的に青葉が撃たれる、って感じかと。
羽衣さんが破裂音で気絶するのも、ルドルフが撃たれる輪廻転生の一要素かなと。

