劇場公開日 2025年8月29日

「ひと夏に起きた出来事で彼らは成長していく」海辺へ行く道 コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ひと夏に起きた出来事で彼らは成長していく

2025年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

カワイイ

1 海辺の町で、様々な人が織り成す人間模様と若者たちの心の成長を描く。

2 ストーリーは、余所から来た訳ありの人と地元の人が遭遇し、そこに中高生がかかわるいくつかのエピソードを繋ぐことで展開していく。中高生たちはひと夏の経験を経て、自分の進む道を定める者、恋に目覚め傷心する者、自我を確立する者と様々である。

3 本作は、 漫画の映画化であり、映画のタッチは穏やかかつ緩い。エピソードのいくつかは、静かな盆踊り大会のようにお笑いのネタ的なバカバカしい。そのことで本作の評価を下げてしまう恐れがある。その半面良いのは、中高のティーンエージたちが溌剌としていること。彼らは学校の美術部員や新聞部員で学校の外でも社会や大人たちと係わりを持っている。エピソードを通じ、彼らが接した大人たちのある者は世俗に塗れ、またある者はよこしまな心を持ち、そして都合が悪くなればうやむやにしようとする。そうした大人たちに比べれば、彼らの心は純粋で善意に溢れている。

4 原作は読んではいないが、恐らく監督の思いどおりに原作の世界を上手く再現したのではないかと想像する。そして、何より良かったのは、中高生役の演者に伸び伸びと自然体で演技させたことだと思う。そのことで本作は、若者たちの心の成長物語として成功したと思う。

5 美術の才能に恵まれた役を演じた原田は、「SABAKAN」の孤独な少年役以来で、足が長くなった。終始躍動する演技で今後を期待したい。

コショワイ