「監督の「原作愛」がなさすぎる」海辺へ行く道 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
監督の「原作愛」がなさすぎる
三好銀さんの原作コミックスは、
版画のような、切り絵のような、くっきりした線と、
目が特徴的でクセの強い人物が、いい。
そしてちょっと
ホラーだったりエロだったりピカレスクだったりする風味を帯びて、
不思議な雰囲気を醸す飄々としたストーリーがまた、いい。
で、期待して映画を観てみたら……
* * *
原作ものの映画で、原作より劣化しているものは、
監督の「原作愛」が足りないと思う。
なぜならそれはたいてい、監督の力量不足ではなく
故意に改変したところが劣化を招いているから。
つまり監督は原作を「材料」としか見ておらず、
「自分がつくればもっとよくなる」とか思い込んでる
としか思えないんである。
ーーそしてこの映画も、
原作より劣化していてガッカリ。
役者の、とくに少年少女の
演技はとってもいいんだけど、
脚本と編集が……
* * *
思えば、
原作をそのまま映像化して素晴らしかったのは、
吉田秋生原作、是枝監督の「海街diary」
この作品には、監督の「原作愛」があふれていた。
横浜さんという方がどんな方かは存じ上げないが、
あちこち改変してツギハギしたことで、
さらにはありきたりなエピソードを加えたことで、
どれだけのものが損なわれるのか、
お考えになったことはないんだろうか。
とにかく、
木に竹を接ぐような改変が多過ぎる。
中1のスプーン曲げ少年が一目惚れしたのは
東京から夏休みにだけ来る中1の少女なのに、
なぜ詐欺師まがいの街頭販売男のツレの女に変えた?
ニホンザルを、巨大なニホンザルの人形で撃退した場面は、
謎の野獣を、訳分からんオブジェで、って変えられちゃってたし。
謎のケンくんの素性が、
別の話の似非芸術家の話と合体させられて胡散臭くなってたし。
さらには芸術家かどうかが分かるという「カナリア笛」が、
最終的にはなんだか雑な扱いだし。
しかも、
ひとつひとつの場面が、ねちこい。執拗に長い。
(だから全体で140分にもなっちゃう)
「しずか踊り」の場面など、どんだけ引っぱるんだ。
(原作では、たったの6ページ――その「キレの良さ」が味わいなのに)
原作そのままのシーンももちろんいくつもあって、
そこは味わいそのままで笑えたんだけれど。
(近くに座ってたオジサマは、最初から最後までめっちゃたくさん笑ってた)
だから、
もっと原作リスペクトがあったら、
と残念なのであります。
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