「これは映画ではなく、確かにどこかにある現実」秒速5センチメートル 苦笑する大学生さんの映画レビュー(感想・評価)
これは映画ではなく、確かにどこかにある現実
アニメ版は、「小~中学時代」「高校時代」「大人」の三章が順に流される構成であったが、実写版である今作は大人の貴樹と明里が日々の中で学生時代を思い出すような構成であった。フィルムレコーディングという撮り方をしていて、デジタルの映像データをフィルムに記録することで、淡い記憶を見ているような質感を作りだしていて良かった。アニメ版は60分で、割と抽象的な表現が多く、空白を残し、我々に考える余地を与えるものであったが、今作は120分であり、キャラの追加もあり、より会話や交流でその余白を埋めてつなぎ合わせるような映画であった。
結論から述べると、この実写化は大成功であるように感じた。予告を見た時に、アニメ版にはないシーンがあり、その出来が正直不安であったが、蓋を開けてみれば紛れもない「秒速5センチメートル」があった。特に大人編のボリュームが増えているのが良かった。アニメ版ではいまいち、貴樹が笑って前に進むラストを迎えるのかわかりずらいのだが、館長にただ明里と話したかったことを伝えたこと、明里があの約束を忘れて幸せで過ごしていてほしいと思っている事を知れたこと、ちゃんと元彼女に好きだった所を伝えた事、これらのシーンが追加されていて心情変化の流れが補完されていた。館長の登場と種田姉の役割の追加は大成功だと思う。
「初恋という呪いをどう受け止め乗り越えるか」というテーマを高品質な実写版で見せられたことで、より現実感というか、見ている感覚より見せられている感覚だった。手紙を渡さなかった明里、渡せなかった貴樹、踏切で振り返らない明里、振り返る貴樹、その対比が切なかった。ただ、恋は忘れる必要はなくて、受け止めて、良い思い出にしまう。前向きな結論を出す作品だと思います。役者陣、挿入歌、主題歌、どれもとても素晴らしかったです。
BUMPOfCHICKENの「話がしたいよ」が個人的にとてもこの作品に合っているなと感じました。渾身の一作です。是非劇場で。
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