「実写⇒小説⇒アニメ 桜の花の満開の下、あの時を忘れない。」秒速5センチメートル Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
実写⇒小説⇒アニメ 桜の花の満開の下、あの時を忘れない。
2025.10.15(水)
原作本未読で観る映画もあるので、アニメ版は未見で鑑賞。前知識ゼロ。そう言えば今年、再映していたような…。
MOVIX川口で「秒速5センチメートル」を。
1991年4月
明里(白山乃愛)は、東京の小学4年の転校生。親の転勤でよく転校している。カメラはみんなの足元を映す。明里だけ規定の上履きを履いていない。隣の席の遠野貴樹(上田悠斗)がノートに書いて教えてくれる。
「上履きは駅前のよしみ屋で売っているよ」
「ありがとう」
「僕も去年は転校生だったから」
明里の顔が明るくなる。転校が多く中々友だちが出来ない二人は仲良くなる。
「大丈夫だから」貴樹は明里に声をかける。
宇宙が好きな貴樹。「貴樹は将来、宇宙飛行士になるかもね」貴樹は明里の誕生祝いに天文手帳92を送る。
六年生になった。
満開の桜の散る下を歩く二人。明里が言う。
「ねえ、秒速5センチなんだって。桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル」
1994年3月
中学に進学する時、明里は栃木に引越す事になる。「同じ中学には通えない」泣きながら電話をする明里。
半年後、明里は貴樹と天文手帳92を往復させ文通を始める。文通を続けるうちに貴樹も鹿児島に引越す事になり、引越す前に栃木・岩舟まで明里に会いに行く。
1995年3月4日
天文手帳は明里の手元にあるため、貴樹は会った時に渡そうと明里に手紙を書く。生憎の大雪で列車は遅延しまくり、途中駅の自販機で飲料を買おうとした時に手紙を落とし、風にさらわれてしまう。
岩舟駅に19:00の約束が4時間以上遅れてしまう。明里は駅の待合室で待っていた。
(小説では、アニメ版より駅を閉める駅員の対応が優しくなっている。実写版にはない)
そして、桜の樹の下で初めての口づけ。抱擁する二人。惑星1991EVが地球に衝突する予定日の2009年3月26日に同じ場所でまた会う約束をする。
翌朝、駅での別れが待っている。
貴樹は手紙を失くし口頭でも想いを伝えられない。渡そうとして待合室で書いた天文手帳92を鞄にしまう明里。「貴樹くんはきっと大丈夫、大丈夫だから」ドアの閉まる音で貴樹には聞こえない。(「望郷」のジャン・ギャバンか。小・中学生時代の二人はとても良かった。特に白山乃愛は表情が良い)
1999年種子島
高校生の貴樹(青木柚)は、担任教師澄田美鳥(宮崎あおい)の妹で同級生の澄田花苗(森七菜)と仲が良い。一緒にカブで通学している。花苗はサーフィンと貴樹の事が好きだが、いくら思っても貴樹の目は花苗を見ていない。花苗はその事をはっきりと認識してしまい涙を流す。誰にも送らないメールを打ち続ける貴樹。そしてそのメールは保存されない。
種子島から打ち上げられるロケットを二人は見送る。(森七菜は本当に高校生ぽかった。
ちなみに1998、1999年のH-Ⅱロケットの種子島からの打ち上げは失敗している)
2008年。
貴樹(松村北斗)は、新宿でSEとして働いている。会社の同僚とは馴染んでいない。同じく会社の同僚で女性社員からも浮いている生真面目な水野理沙(木竜麻生)と付き合っているが、彼女の部屋に行っても一緒にコーヒーを飲みTVを見るだけ。やはり貴樹の目は理沙を見ていない。
明里(高畑充希)は新宿の紀伊國屋書店で働いている。まもなく結婚する明里は母のいる実家に行き、押入れから貴樹との文通に使っていた天文手帳92を見つける。
貴樹は、結婚して今は新宿で働く担任教師だった美鳥(宮崎あおい)と新宿の路上で出逢う。夜、飲みに行く約束をし、美鳥は同僚の明里を誘うが、明里は急に店長(又吉直樹)に残業を頼まれ一緒に行けない。
水野と書店に行った貴樹は店頭で天文手帳08を見つける。
貴樹は行き詰まりと限界を感じて担当プロジェクトを終了させた時点で会社を辞め、水野とも別れる。
職場の先輩窪田(岡部たかし)の紹介で多摩六都科学館のプラネタリウムのプログラミングの仕事に就く。プラネタリウムの前で天文手帳09が売られている。
2009年3月26日
本(天文手帳)の納品でプラネタリウムを訪れた明里は館長(吉岡秀隆)の勧めで貴樹の生解説で星空を見上げる。(多摩六都科学館はプラネタリウムの生解説で有名。武蔵野市に住んでいた時に一度行っておけば良かった)
プラネタリウムを見終えた明里は、そこにいた子供に「桜の花の落ちるスピードは秒速5センチメートル」と教える。
「落ちるスピードは秒速5センチメートルだって。お姉さんが教えてくれた。」
子供たちの会話を聞いた貴樹は天文手帳09のポップを見て館の入口に走るが明里の姿はない。
明里は帰りのバスの中、プラネタリウムのチラシに解説:遠野貴樹の名前があるのに気付き微笑む。
その日は約束の日。貴樹は帰宅しょうとしたが新宿駅で思い直して、あの桜の樹の下へ行く。19:00に間に合ったが、明里は来なかった。
貴樹は、館長に約束の日の事を話す。館長からは、あの雪の日に来た同じ約束をした人が私は行かないと言っていた。「あの約束を忘れる位、幸せに生きていて欲しいから」と言っていたと。
貴樹は、水野を呼出し部屋を訪ねた時に借りてそのままになっていた傘を返す。
そして水野の何処が好きだったのかを告げる。面と向かって良い所を告げられたのは嬉しいが「遅いよ。でも、ありがとう。ちゃんと言ってくれて」と言い水野は貴樹の前から去る。(木竜麻生も最近活躍しているね)
貴樹は、小田急線の踏切で明里とすれ違う。
上りと下りの2本の電車が通過して行く。遮断機が上がると彼女の姿はない。貴樹は踵を返して歩き出すのである。
本作鑑賞後、調べたら本作は2007年のアニメ版「秒速5センチメートル」だけでなく、その後新海誠によって書かれた小説版、そしてコミックスも含めたトータルな「秒速5センチメートル」のリ・クリエイトである事が分かった。
62分のアニメを121分の実写にして間延びしているという評もあったが、それは違うと思う。
新海誠は、アニメ版のあとに「みんなを元気づけるために映画を作ったのに、落ち込んだと言う意見をもらった。それは自分の意図とは違うので、そこを後悔して小説版を書いた」
だから、小説版では加筆されている部分が多い。貴樹が大学に入ってから二人の女性と付き合った事、水野理沙(アニメではメールだけでほとんど登場しない)との交際する姿も描かれている。小説版では水野は同じ会社の同僚ではない。ノベルでは水野が電車に乗れない理由も。
そして、新海誠の小説はこの言葉で結ばれている。
この電車が通り過ぎたら前に進もうと、彼は心を決めた。
実写版「秒速5センチメートル」(2025)
小説版「秒速5センチメートル」新海誠
奥山由之✕松村北斗✕新海誠のスペシャル・トーク・セッション(1時間)
アニメ版「秒速5センチメートル」(2007) 2025.10.22レビュー済
「秒速5センチメートル」THE NOVEL(脚本を元にした書き下ろし)鈴木史子
実写版鑑賞後に色々な情報を入れ過ぎて自分の頭の中で少しこんがらがったかな。二人が出逢うのが小学4年だったり5年だったり、水野は会社の同僚だったり違う会社だったり、それぞれ設定が微妙に違う。
NOVELでは書店で天文手帳08見かけた貴樹は、それを手に取って購入する。
実写版では、アニメ版では手紙の文通だったものが天文手帳を使って往復で行われており、プラネタリウムやヴォイジャー等天文や宇宙に関する要素が盛り込まれている。
実写版で明里は最後に結婚してメルボルンへ行くという。東京とメルボルンは、栃木と種子島よりも遠い距離であり、本当に二人はもう会わないと言うディスタンスになる。
さらには実写版では貴樹は別れたあと水野と会って直接彼女の良い所を伝えている。
水野は二年間交際しても貴樹に1センチも近づけなかったとメールしていた。二年間楽しくないけど楽な存在として横を歩いていたのにである。
それが貴樹の方から近づいて行っている(遅かったけど)。約束の場所に行って、貴樹が変わった事を示している。
実写版では花苗の姉美鳥を結婚した書店員として東京に登場させている。(宮崎あおいは良かった)
新海誠は「全てに意図がある」と言う。
だから、アニメ版で明里がトルーマン・カポーティの「草の竪琴」を読んでいるのも、第二話が「コスモナウト」なのも意図されたものなのだろう。宇宙飛行士(コスモナウト)はどこにも出て来ないのだから。
だから、その意図を汲んで実写版で明里に「貴樹は宇宙飛行士になるかもね」というセリフを言わせている。
対談では、奥山監督と松村北斗はアニメ版をリスペクトしているし、新海誠は実写化に感謝している。新海誠は、松村北斗が屋上でたこ焼きを食べるところはアニメでは出来ない、と言っていた。たこ焼きを食べながらもの思う松村北斗の表情はアニメでは表現しきれないと。
新海誠はプラネタリウムのシーンで泣いたとそうだ。
結局、二人は中1の別れの思い出を持って生きているが、貴樹は忘れられず、明里は良い思い出として結婚して次に踏み出そうとしている。
男は女々しく、女は過去を引きずらないと言う事なのか。
やはり山崎まさよしの挿入歌「ONE MORE TIME, ONE MORE CHANCE 」は実写版でもフルコーラスで聴きたかったな。米津玄師はクレジットで良い。
不満
デジタルデータを16mmフィルムに焼き付けてザラザラした質感を出しているが、小・中・高時代の過去パートだけにして現代パートはやらなくても良かったのでは。2009年でも現在(2025年)から見れば過去なのだが。
貴樹が喫煙して教師澄田美鳥に咎められる設定は不要。貴樹と美鳥が話し合うきっかけがあれば良いだけ。
疑問
駅の別れで「手紙を書くよ。(電話も)」
と言っていたのに、二人はその後連絡を取りあわなかったのか?
おまけ
60年位前に父親に思川までフナ釣りに連れて行かれた。20cmくらいのフナが2匹と小魚が釣れた。何故思川に行ったのか、理由は分からないが随分遠い所だった記憶がある。あんなに遠くまで釣りに行ったのはあの時だけだった。岩舟は、思川の更に3駅先である。
レビューアーの方から水野が一番細かく描かれているというコミック版を勧められたが、そこまでは手が回らなかった。機会があれば読んでみたいと思う。
おはようございます。
共感、コメント有難うございます。
あの作品は、一作でお腹一杯です。2はどうしようかなあ。好みではないんですが、観るかもしれません。ではでは。
共感とコメントありがとうございます。いつもながら緻密で説得力のあるレビューを読ませていただいてます。とても勉強になっております。ありがとうございます。
私は2007年の新海作品と本作しか今のところ観てません。
今回の実写版は私小説的なトーンを低く抑えつつ内容的にも俳優、演出、脚本全てがバランスよく整っている良い出来映えの作品であったと感じています。
コメントありがとうございます!
観た人それぞれの感じ方で良いと思います。私はアニメで予習して本作に臨みましたが、差異を探す見方ではなく、純粋にもはや新作と感じるくらい新鮮に楽しめました。
共感ありがとうございます。
詳しい解説が本当に参考になります。今、気になってるのは貴樹くん、いかに激務とは言え元気無さ過ぎじゃないか。今の彼女にはちゃんと承諾したんでしょう?ふとした事で残った気持ちに気付く・・って体なのかなと思いました。
共感ありがとうございます!
自分もアニメ版未鑑賞で観てきました。上田悠斗と白山乃愛の子役二人と、森七菜の切ない高校生役が凄く心に刺さっていい雰囲気で鑑賞出来ました。でも、遠野貴樹との交換日記を読み返しながらも、約束の日の事なんか忘れて、配偶者と一緒にイチャコラして海外逃亡する高畑充希が冷たく感じて、この人の役者としての幅を広げる一手段なんじゃないかと思ったりもしました。
実写版への共感・コメントどうもです。
私は実写版を最初に観たので受け入れやすかったです。ただ、その後理解を深めようと色々な情報を入れ過ぎて混乱も生じています。疑問については一つの回答を示唆頂き有難うございます。
ミンミンはいつも混んでますね。特に土、日は。
Mr.C.B.2さま
レビューアップ前の共感、ありがとうございました🙂
>新海誠は、「…それは自分の意図とは違うので、そこを後悔して小説版を書いた」
>そして、新海誠の小説はこの言葉で結ばれている。「この電車が通り過ぎたら前に進もうと、彼は心を決めた。」
>対談では、奥山監督と松村北斗はアニメ版をリスペクトしているし、新海誠は実写化に感謝している。
アニメ版を公開時に観て、実写版の公開2日前にもう1度復習して…
もし記憶を消すことができたら、この実写版を新雪のような映画として、まっさらな気持ちで観たいと思っています。
「疑問」については、あの雪の夜、桜の樹の下の貴樹と明里が無断外泊で朝帰りしたので、2人の親はその後連絡を取らせないようにしたため、お互い音信不通になってしまった…と理解しています。
多摩六都科学館のプラネタリウムは、1度行ったことがあります。
1週間前に奥山由之監督&松村北斗さん&高畑充希さんが、このプラネタリウムで映画のイベントを開催していたのはステキな企画でした。
ハモニカ横丁のラーメン屋さんは雨の土曜日に行ったのですが、みんみんも珍来亭も行列で諦めました。
吉祥寺の町中華も、いつまでも無くならないでほしいです😙
※もっとコメントしたいことがあったのですが、長くなったので失礼します。
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