「迷う映画」秒速5センチメートル nasucaさんの映画レビュー(感想・評価)
迷う映画
きっと自分が20〜30代で、独身で、初見であったなら、ものすごくハマったかもしれない。
この映画の評価が難しいところは、そもそも新海さんの癖強のオリジナルアニメが既にあって、嫌が応なしにも比較してしまう点。比較するのがナンセンスである意見も分かるが、脳裏にちらついてしまう。その点で、なかなかデスアドバンテージになってしまってる。
おそらく「現在の役者陣で見てみたい」というモチベーションで始まったと思うが、それに白羽の矢がたった監督はじめスタッフ陣、役者陣は良い仕事をしたと思う。
一方で、それは自発的、内的に発生するクリエーションではないので、狂気とも思える映像美を追求してできたオリジナルと比較するとどうしても作品の質としてパワーが落ちる。それも難しい点だった。
また、パンフの内容からも見受けられたが、いろいろ迷いながら作られたカットがあったと思う。「さすがっ」と思うような良いカットや実写ならではの表現もいくつかあったけども、「これは本当に納得した絵なのかな?」と思うような部分もあった。そこはアニメと比較して実写の限界だったのかもしれない。
トーンは岩井俊二や篠田昇を意識したようにも見えるけど、これもまた狂気の二人と比べると、運とパワーが及ばない。この点は仕方ない部分もあって、見方を変えれば若々しいであったり、これからの伸び代に期待する、とも言い換えられる。
音楽については、江崎氏や米津玄師の楽曲を否定するわけではないが、1991は名曲だと思うが、やはりオリジナルの天門さんの楽曲が「新海作品らしさ」をたらしめてる要素として、かなり大きいウェイトを占めていることを改めて実感した。
というわけで評価も迷う映画であった。
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