「実写になっても消えない、儚さと美しさ」秒速5センチメートル 観たい日は休みますさんの映画レビュー(感想・評価)
実写になっても消えない、儚さと美しさ
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アニメ版は数年前に観ていましたが、ストーリーの細部はもううろ覚えのまま劇場へ。それでも、スクリーンを見つめるうちに「そうそう、こんな感じだった」と記憶がよみがえる瞬間が何度もありました。
実写版はアニメの絵コンテを意識した構図で撮られていて、再現度の高さに驚きました。新海誠監督の映像が20年近く経っても印象に残っているのは、当時から視覚表現のリアリティに優れていたからだと思います。実写になっても、あの透明感や空気の揺らぎがちゃんと残っていたのが嬉しかったです。
一方で、実写ならではの描写も印象に残りました。転校を繰り返す遠野は、同級生より少し早く大人になったように見えますが、社会に出る頃にはどこかで追い越されているようにも感じます。
その不器用さを、周りの大人たちが優しく見守っている。原作にはなかった“他者のまなざし”が加わったことで、遠野という人物の奥行きが深まっていました。
明里の描かれ方にも大きな違いがあります。アニメでは、遠野との日々は淡い過去として整理されていて、ふとした瞬間に思い出す程度。
一方、実写版の明里は、あの記憶を「今の自分を形づくる一部」として生きています。恋愛感情の延長ではなく、自分を成長させた糧として抱いているように見えました。
キャストはそれぞれの役にぴったりで、米津玄師の主題歌も作品の余韻を静かに包み込んでいました。
観終わったあと、映画というより“記憶のアルバム”をめくったような感覚に。時間が経っても消えない想いを、そっと思い出させてくれる作品でした。
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