「実写だとより痛々しい初恋の呪縛」秒速5センチメートル kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
実写だとより痛々しい初恋の呪縛
アニメ版の公開は2007年で観てはいるのだがすっかり覚えていないままに、本作を鑑賞した。原作はこんなにストレートで分かりやすい話だったかという印象だったので、あらためてアニメ版を見比べて見た。
そもそも新海誠監督の原作アニメは約60分の中編でしかも3話のオムニバスだ。それを2時間の長編にしているのでかなり映画オリジナルの部分が多い。大きく違うのは映画は現代(2007年)を軸に過去を振り返る内容になっているところで、現代パートはかなり映画オリジナルとなっている。また、アニメ版は主人公のモノローグで語られる詩的な内容なのに対し映画は語りナレーションはなく、主観で物語が進むためリアリティがある。
奥山由之監督が取った手法は生身の人間が演じる映画の手法として成功している。ただ、この映画の表現としてアニメがいいのか実写がいいのかというとやはりアニメーションが適しているのではないか。
そもそも初恋の呪縛を大人になっても引きずっている男の話を断片的にポエティックに美しい絵でさらっと描いたのが原作なので、人間がリアルに演じ2時間も物語ると痛々しさがより増してしまうのだ。だから18ミリフィルムのような画質で絵に近づけたのは成功している。
なぜ、分かりやすいラブストーリーになっていると感じたかは成人した明里(高畑充希)のエピソードが挿入されたからかもしれない。そして成人した貴樹(村松北斗)は中学時代の約束を果たそうとするというエピソードも挿入された。
過去にとらわれない明里を描いたことと、初恋の呪縛にとらわれる貴樹を描いたことで痛々しいラブストーリーにしたのが原作との大きな違いであり分かりやすさの要因だ。
正直この展開は新海誠監督は意図していない。
映画版で最も好感が持てたのは種子島での高校生パート。ほぼ原作に忠実で他のパートに関連しない短編映画として観られる。
高校生の貴樹役の青木柚と澄田花苗役の森七菜が瑞々しく切ない高校生を好演している。特に森の告白したいのにできない切ない演技が出色。
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