「穏やかな時の流れに紡がれた、恋心」秒速5センチメートル bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
穏やかな時の流れに紡がれた、恋心
『君の名は』の新海誠監督が描いたアニメ映画、『秒速5センチメートル』の映画実写化。小学生だった1991年から、社会人となった2007年までの16年間、心に秘め続けた恋心の行方を描いた、切ないラブ・ストーリー。決して、大きな事件があるわけでもなく、燃え上がる様な恋愛模様でもない。しかし、等身大の青年の極々日常の景色を描くことで、却って感情移入しやすい作風となっていた。
また、新海作品のアニメと同様に、登場人物の背景や、シーンとシーンの間に差し込まケる風景は、本当に美しく切り取られていた。特に、主人公が高校時代を過ごした種子島の夕暮れやサトウキビの畑の風景、ロケットが煙を吐きながら天高く昇っていくシーン、幼馴染の女の子と訪れた雪中の桜の木は、芸術的な風景写真を鑑賞しているようで、新海監督の想いを忠実に描こうとする映像美の演出に魅了された。
1991年桜の季節、静岡から東京の小学校に転入してきた篠原明里は、なかなかクラスに馴染めないでいた。そんな時、明里に寄り添ってくれたのが、同じ転校生の遠野貴樹だった。子供心に互いにひかれあう2人だったが、中学校入学と共に、明里は転校してしまい、離れ離れになってしまう。文通を通して互いの様子を報告し合っていたが、その1年後に、貴樹も種子島へ転校することになってしまう。そこで種子島に行く前に、貴樹は明里を訪ねる旅に出る。積雪の為に、思う様に電車が進まず、時間に間に合わず、夜遅くにようやく明里の家のある駅に到着した貴樹。そして、その駅舎の中で…。
という、思春期の思い出と並行して、2007年の現在、全く別々の道を歩いている貴樹と明里の近況が映し出されていく。貴樹はプログラマー、そして、明里は書店の店員として仕事を持ち、それぞれの人生を歩んでいたが、事あるごとに、あの日のあの約束を思い出していた2人。果たして、この恋の行方は…?作品の結末に関わるので詳しくは言えないが、『男は過去を引きずり、女は明日を見て動き出す』というところだろうか…。
主演の松村北斗は、『ファースト・キス』や『夜明けのすべて』等でもそうであったが、変に演技しないで、感情を表に出さない朴訥な青年役の演技が、とても巧い。また、高畑充希も本作では、極々普通の女性の会話や所作が自然体で、こちらもよかった。森奈菜は、本作の様な、貴樹に片思いする助演役だと演技が光る。そして、小学生時代の明里役を演じた白山乃愛は、これから成長して大女優にへ変貌を予感させる金の卵だと感じた。
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