「ちょっとした疑問と蛇足がなければ満点」秒速5センチメートル 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとした疑問と蛇足がなければ満点
以前、新海誠監督の原作アニメはVODで観ていたんだけれど、
正直、その厨ニ病的ベタ甘センチメンタルは
直視に堪えず、思わず早送り多発。
でも、
監督自身によるノベライズは
とくに「大人の部」の背景を増強していて
落ち着いて読め、けっこう面白かったので、
もしかしたらワンチャン、と思って観に行ったのであります。
* * *
実写版は、アニメ版を換骨奪胎、順序を並べ替え、
ノベライズ版で語られた背景を、表に出していて。
これは、とっても理にかなっていて自然。
さらに実写版は、独自の設定を加えていたんだけれど、
それはある一点を除いて納得のいくもので。
その一点とは、
種子島の花苗(かなえ)のお姉ちゃん。
アニメにも小説にも名前は出てこないけど、実写では「みどり」(宮崎あおい)。
その彼女が、
11年前の種子島では高校の先生だったのに、
紀伊國屋書店の店員さんになっていたんであります。
なんで??
まあ、そこ以外は、
むしろ原作アニメより小説より
よくなっていると感じてたんであります
――ラスト15分までは。
2009年3月26日、岩舟でのエピソードの後、
アニメでもラストに描かれた小田急の踏切の前の
およそ10分が、
めっちゃ蛇足。
それまでは、
あ、この実写化、大成功じゃん!
と思って、
とくに白山乃愛さんと森七菜さんの演技には、
感動のあまり悶絶していたんだけれど、
その蛇足で萎えた~。
(憶測だけど、これは「話を分かりやすく説明した方がいい」という
プロデューサーのゴリ押しじゃないかと)
* * *
アニメ版は、
さっきも書いたけどとにかく厨ニ病的甘々センチメンタルなんだけれど、
そのビジュアルは目を剥くほど素晴らしかった。
あまりにもリアル、どころか、リアルを超えてさらに美しく。
これぞアニメの存在意義、と高らかに訴えたくなるほどの美しさで。
今回の実写版は、
実写では諸条件が限定されるので撮影が難しいはずなのに、
その「リアルを超えたアニメ」に迫る美しさを「リアル」でやってみせ。
とくに、
種子島のロケット発射シーン。
それはそれは、お見事でありました。
>トミーさん
すれ違って振り返る、っていう場面は、こちらの原作を「君の名は。」で流用したかたちですね。
「ボードに立てたら告白する」っていうむず痒い設定をこの実写でははっきりさせてませんでしたが、それはかえって好みでした。
明里が約束の場所に現れず、その真意を館長から聞き…
その後で、あの踏切で振り返って長々と待ち続けちゃダメな気がするんですよね。
一瞬立ち止まるけど振り返らず歩き出す、だったらまだ良かった。
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