「もうひとつのありえたかもしれない世界」秒速5センチメートル マサ雅さんの映画レビュー(感想・評価)
もうひとつのありえたかもしれない世界
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冒頭から空気感のあるフィルムライクな画質にやや押し付けがましさを感じたが、回想部分だけでなく全編を通じて使用されているのは、現実から心の中に再構築された世界を描こうとしたからだろうか。子供の目線と大人の目線でハンドカメラのブレぐあいを変えているところはさすがだと思う。子供の目線は好奇心で落ち着かず、時に地面を這い、時に宙を舞う。
『君の名は。』のように、そこかしこに切ない「時空のすれ違い、物理的絶対的な隔たりを克服する人間の心」を感じる。奥山監督は意識的に高畑充希と似ている森七菜を選び、観客が混乱するのを狙ってもうひとつの「有り得たかもしれない出会い」を重ね合わせている。現実は、そうしたIFの虚像が人の心によって何重にも重ね合わされているものなのかもしれない。居酒屋での有り得たかもしれない再会、プラネタリウムでの有り得たかもしれない再会、約束した日の、雪が舞う桜の木の前の有り得たかもしれない再会、そして踏切での有り得たかもしれない再会。
人はそうした現実に、映画と言うもう一つの世界で癒されていく。
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