「人生の速度は人それぞれ。」秒速5センチメートル ゆゆゆんさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の速度は人それぞれ。
原作アニメ未視聴、事前知識ほぼなしで実写映画を観ました。原作ファンには改変等の気になる箇所が多々あったようですが、私は気になる点なく物語に引き込まれました。
観終わったあとの余韻がすごい。人は過去と共に現在・未来を生きていくことを丁寧に描いた心揺さぶられる物語。
過去が今のわたしを形作っている・思い出は日常だと生きている明里と、思い出に囚われ過去に取り残された貴樹との対比には胸が締め付けられた。
大人になり燻らせ続けていた貴樹が、
先生の『思い出を笑い話にしたり、オチを求めちゃだめ』
館長の『人が一生のうちに出会う言葉の数は5万語』
というめぐり逢いで出会った人に掛けられた言葉により過去に囚われた彼の秒針が少しずつ進み、最後には必死に駆け出していく姿がとてもいい。
あの音楽と共に3/26に約束の場所へと駆け出してから、プラネタリウムで館長に思いを吐露するシーンは涙せずにはいられない。
『もう一度話したかった。久しぶりとか元気だった?とか』
『僕は5万語もいらない、自分に必要な一言だけを…』
ここのセリフが本当に刺さる。
もう一度会いたい人・話したい人、言いたかったことって生きていれば誰しも存在すると思う。
でもその瞬間には二度と戻れない。自分にも重なる部分があり心の琴線に触れる今作の中で1番刺さる名シーン。
館長から代弁された『そんな約束を忘れてしまうくらい幸せな人生を歩んでいてほしい』という彼女の想いを聞いてやっと、お別れのホームでカバンから天文手帳を取り出そうとし辞めたこと、貴樹くんは大丈夫と伝えたこと。この時にはもう明里は、思い出を胸に未来へ進む決意をしていたことに気付かされた。
幼少期を演じた白山乃愛さんがとても可愛らしく自然な振る舞いで、貴樹の忘れられない人になるのも説得力がある。
また松村北斗さんの表情や哀愁漂う貴樹の雰囲気も本当に良く、納得のキャスティング。
というより上田悠斗くん、青木紬さん、松村北斗さんの貴樹を演じたお三方とも、それぞれの年代の貴樹が抱えるノスタルジーを繊細に表現していて名演技。
最後の踏切。
美しく切ない、だけど現実的なとてもいいラストシーン。どんな過去の思い出も抱きしめて生きていこうと思わせてくれる素敵な作品。
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