「初恋は儚くとも楽しみ、人生は短くとも尊びたい」秒速5センチメートル mr.buonoさんの映画レビュー(感想・評価)
初恋は儚くとも楽しみ、人生は短くとも尊びたい
小学生の貴樹と明里が過ごした日常の想い出は美しい色合いで、その映像美に何処か懐かしさを感じて惹き込まれる。雪の降るホームで、貴樹を見送る明里は貴樹の明るい未来を願いつつも、既に自らの明日を見つめて別れを決心していたのであろうか? もし、貴樹が言葉で"好きだ"と伝えていたら二人の未来は違っていたのだろうか? それから16年の歳月が過ぎ30歳になる頃の場面では、二人の偶然の再会に期待を寄せて観ていたが実現する筈もなくモヤッとさせられた。"ただ話したいだけ" 、それすらも叶わなかったのは、今の二人は各々が自分の世界で暮らし明里は既に結婚していたので交わらないことが運命と云うことなのか? それとも、大人になった二人が会えば美しい想い出が色褪せる結果に繋がってしまうからだろうか? そして、過去に交わした約束の日に貴樹は雪の降る桜の木の前で明里を待つが、それは美しくも切ない想い出であることを知る。貴樹は、岩舟駅の待合室で深夜まで待っていてくれた明里への想いをプラネタリウムの館長に聞いてもらう訳だが、果たして立ち止まっていた自分を解放して灰色のビルに囲まれた世界から踏み出すことが出来るだろうか…
貴樹が踏切を渡るシーンですれ違う明里を見るのは、未だ明里を忘れられないからであろう。16年の歳月は容易には消化できない。
ところで別件にはなるが、花苗(森七菜)の青春は瑞々しさに溢れていた。彼女の恋も儚く散ってしまうが、そのことも含めて花苗の人生は輝き続けているに違いない。
この映画は、過ぎ去った日々を振り返ってみると桜の花びらが秒速5センチメートルで散り落ちるが如く短いと教えてくれたと思うが、今の自分は晩年の寂しさを隠しつつ人生は未だ長いと思って抗いたい。
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