「世界観に命を吹き込む演技」秒速5センチメートル toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
世界観に命を吹き込む演技
オリジナルのアニメーションは未見。また、新海誠監督作品が好きだけど
全作品を観てはいないので”にわか”ファンとしての感想。
・独特の世界観が好き。過去に鑑賞した新海誠監督作品に通じる雰囲気。
・原作アニメとの比較ではなく劇映画として、登場人物に共感できる。
生身の人間が演じるからこそ表現できる機微が伝わってきた。
優秀なアニメーターさんが作画して優秀な声優さんが声を吹き込んだ
作品ももちろん良いはずだが、実写の方がより多くのことを語って
くれるのではないか。フィクションでありながら自分事のような感覚で
観ることができる、そう思った。もちろん演者に演技力がある
という前提で。
大事件が起きたり誰かが亡くなったりする話ではなく、親の転勤で離れ離れ
になった初恋の人を一途に思い続けるある男(遠野貴樹=松村北斗)の物語。
派手な見せ場が好きな人には物足りないかもしれない。実際、隣の
席にいた人が足を何度も組み替えたりため息をつく音が聞こえてきた。
多分その人には退屈だったのだろう。
自分も最初の方は方向性が掴めず戸惑った。そして物語そのものよりも
情景描写や場面ごとの心の機微に注目しているとだんだんその世界観に
引き込まれていった。宇宙や星に関係する話がたくさん出てくるのが独特だ。
何度も出てくる、桜の花びらや雪が”秒速5センチメートル”で舞い降りる
場面での空気感が好きだ。
ちょっと謎だったのが、栃木県岩舟の彼女に会いに行くとなった時にどうして
待ち合わせがあの時間だったのだろうということ。家に泊めてもらう前提
ならそれもありかもしれないが、画面を見た限りでは違うようだった。
何か特別な理由を説明する描写があったか?結局朝お別れすることになるが
その間はどこで何をしていた?
小学生~中学生カップルの瑞々しさがある演技が良かった。当時過ごした
時間を二人ともとても愛おしく心に刻んでいた。それが長い年月を経ても
それぞれの生き方に影響しているところが良かった。成人した二人を
演じた松村北斗・高畑充希の演技ももちろん良かった。
この作品の主要な出演者は会話がとても自然な感じで、どこにでもいる
普通の人の物語という親近感があった。物語を動かすための説明ではなくて
今この瞬間を生きている人間の普通の会話に聞こえた。
二人をつなぐ接点が見えてきて、最後は再会してハッピーエンドかと
思ったらそうではなかった。かつて「2009年に同じ場所で再会しよう」と
言っていたその場所に彼女は現れず。
小学校時代は親の転勤で離れ離れになることが決まった日にちょうど
踏切のあちら側とこちら側にいる場面があった。
大人になってからの踏切の場面。いつかは再会できると期待していて踏切を
渡る時、すれ違ったのはもしかして?ところがすれ違った後遮断機が降りて
電車が何本か通過。電車が通り過ぎた後にはもう彼女の姿はなかった。
その前に新しいパートナーと一緒の場面があったし、彼女にしてみれば
「元気でいてくれればそれで良い」ということなのだろう。すれ違うだけで
多分目線も合わせていない。切ない終わり方だ。でも余韻がずっと残った。
自分も親の仕事の関係でよく引っ越しをしたし当然転校もした。だから
何となく身近な物語と感じた。親の転勤で仲良しと離れ離れになってしまう
経験はかなり多くの人があるだろう。割とありふれたそんな出来事を物語と
して膨らませ、こんなにも切ない感情にさせることができる新海誠や映像作家
たち。やっぱり彼らはそういう才能に恵まれているんだなと改めて思った。
映像面では、まだスマホが普及していなかった時代を表現するためか、
35ミリフィルムで撮ったような画質になっていた。懐かしい雰囲気を感じた。
たくさんの印象的な場面があった。好きな映画ではあるが、所々で手持ち
カメラにしてわざと手ぶれさせた映像は好きではなかった。
toshijpさま
共感ありがとうございます🙂
「謎」の答え合わせは、アニメ版を観ればできます。でも私は、あの夜の桜の樹の下の2人がどうしたか、敢えて描かなかった実写版が好きです。
誤解を恐れずに言えば、18年前のアニメ版『秒速5センチメートル』の存在は、ある意味「初恋の人」なのではないかと思っています。
宮﨑駿監督が新海誠監督を認めたように、新海誠監督が奥山由之監督を認めていることが、何よりだと思います🫡
共感ありがとうございます!
映像のアナログ感ですが、デジタルで撮ったものをわざわざフィルムに焼き付けて作ったようですね。今は簡単に画像のCG加工が出来るのに、こういう細かいところでこだわって作っている所に職人っぽいカッコよさを感じます。
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