「新海誠の知らない思い出を植え付けられる心中みたいな自傷行為。なのに最後は宇宙に一人放り出されるようなそんな映画。」秒速5センチメートル 未来の生命体さんの映画レビュー(感想・評価)
新海誠の知らない思い出を植え付けられる心中みたいな自傷行為。なのに最後は宇宙に一人放り出されるようなそんな映画。
タカキの恋のペースが5センチメートルだよな。
お互いに呪いを掛け合ってるし、特にあんだけ遅れたのに待っててくれるとか完全に落ちます。勘違いもします、両思いなのに伝えられなかったのが悲劇だね。だから何も起こらないし始まらない。でもやっぱりずっと初恋の子に送るメール作っては消してを繰り返してるのは気持ち悪いよ、タカキ。
でもめちゃくちゃ共感できるんだよな。中学時代にあんなゴリゴリの恋したら戻りたいって思うし苦しいもん。その先の人生が先の見えないトンネルになるわけだ。
タカキくんにとってあの頃、というか明里が人生の全てだし唯一縋れる道標だったんだな。明里にとってはタカキくんを形成する周りのコンテンツが日常だけどタカキにとってはキラキラした思い出そのものみたいな明里がすべて。そのすれ違いもあるしタカキは言葉にしないからな幸せにはなれないよ。俺への当てつけだよな、新海誠?わかってるよ。タカキは俺だ。日々気取って動のない日を生きてるよ。
どんでん返しは無いんだけど心に確かな引っ掛かりを残された。生半可な気持ちで見に行ったちょっとナードなカップルは刺さりすぎて眠れないんじゃ無いかな。
細かな表情での感情表現も素晴らしく、こっちまで泣きそうなくらいだったし、子供のころのどこか依存じみた恋愛模様がものすごくアダルティックででも変に背伸びしてなくて等身大の全力な恋で、こんな恋愛したかったなあって、あれ?でもしたことあるんじゃないか?って思わせるパワーがあってすごくいい。
たしか高校時代のとこでケータイポチポチしてるとこって居酒屋で言ってた宮沢賢治味のあるポエムを書いてるのは嘘で明里へのメールを書いては消してを繰り返してた覚えがあるんだけど、こいつめちゃくちゃ気持ち悪いって思ってた。電車のシーンで「大丈夫」って言ったの聞いてればちゃんと引きずらず次の恋もできたはずだし高校時代ももっと充実したものになってたはずだよ。
見終わった後の心にぽっかり穴の空く独特の浮遊感は他では味わえません。ほんとなんでもっと早く好きって伝えなかったんだよタカキ。
心にしこりが残りすごく苦しくなるそんな原作の感覚をそのままに実写化されててほんとにほんと良かった。個人的には過去一の実写映画。米津に釣られて行ったけど映像も夢みたいで良かった。大ヒットはしてほしく無いな。自分だけの思い出にしておきたい。
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