「静かに、琴線に触れ続けている」秒速5センチメートル パジャマさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに、琴線に触れ続けている
原作のアニメ映画は未見です。
なので元々の作品ファンの方にとっては気になる箇所もあるのだと思いますが(自分が原作ファンの作品はそうなりがちなので)、少なくとも初見の私には無理な改変や要素は感じられず自然に物語を追うことが出来ました。
まず俳優陣の演技が良かった。
とても自然で、喋り慣れていない人が言葉を選びながら話す時の話し方、繊細な仕草や表情。言葉で多くを語りすぎない、静かな心の動きが伝わってきました。
小学生の頃の淡い恋の思い出、
遊びながら帰る住宅街の通学路、
他愛無い話題で溢れた手紙のやり取り、
親には秘密の待ち合わせ、
意味もなく寄り道したコンビニ、
心に折り合いをつけるためにただ泣きじゃくるしか方法を知らなかったこと
映画を見ながらふと自分のことを思い出してしまう、考えてしまう。そんな心の琴線に触れる瞬間が幾度もありました。映画を観た人の誰しも、どこかに共感できる箇所があるのではないでしょうか。今となっては愛しい学生時代。そうして少し、子どもの頃の自分にちゃんと向き合える大人になっているのかと、幼い遠野くんの言葉に不安になります。
何度も何度もすれ違い、出逢いそうになってはまた離れる二人。転勤族の孤独な小学生たちの出会いは0.0003%の奇跡で、二度目の奇跡はなかったけれど、どれほどかけがえのないものだったか。彼らの日常に、あるいは約束の場所へ駆け出す衝動に、見出すことができました。
お互いに忘れることなく、ただ果たされなかった約束。ロマンチックでドラマチックな恋愛ドラマのように、約束の桜の下で再会することも、踏切の前で待ってることもなかったけれど、だからこそとてもいろいろな感情を引き出され、観終わった後の余韻からなかなか抜け出せない作品と感じました。
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