「縮まらない距離(初日舞台挨拶含む)」秒速5センチメートル MP0さんの映画レビュー(感想・評価)
縮まらない距離(初日舞台挨拶含む)
アニメーションの実写化は映画を問わず、基本的に歓迎していません。
俳優を使いたい側の理屈はわからないではありませんが、原作の人気に乗っかることで売り出したい側にとって都合が良いばかりで、原作へのリスペクトがあまりにも足りない作品が全てとは言いませんが圧倒的に多いからです。
実写映画が国内の興行収入10位から全て消えた事も致し方ないと思っています。
実写映画を観る時にはスピンオフまたは別作品を観るくらいの気持ちで鑑賞予約をしました。
原作は越えられない。けれど原作にはない、または見つけられなかった欠片のようなものを見つけられる作品だったと思います。
さて、今や国民的人気監督となった新海誠が手がけた伝説的な作品の実写化…私も原作は鑑賞後にこれほど打ちのめされた事がない体験をした思い出深い作品です。
昭和後期・平成前期生まれの世代なら多かれ少なかれ経験したことのある大切な人の転校や別離。私も例に漏れず経験があり、毎年のように仲の良いクラスメイトが次々に転校していき、ある時に転入してきた女の子に恋をしたことがあります。その後、その子はまた転校してしまいました。両片想いであったかは知る良しもありませんが。
(だから原作を観るとママレードボーイ7巻を読んだ時のような救われない感じに気持ちが落ちます)
ちなみに子ども時代ではありませんが、元カノの名前があかりでなかなか心がエグられるものがありますね…彼女はどちらかと言えば水野理紗っぽい感じでしたが(どうでもいい)
原作を観た際にはあまりの衝撃に、当時働いていた職場のアルバイトの男の子が中学時代から付き合っていた彼女にフラれたと落ち込んでいたので「前向きになれるアニメ」として紹介して励ました記憶があります。
大好きな作品ですから期待半分、不安半分でした。
そんな心理が働いたからなのか、序盤の会社で孤独に働く貴樹の姿にあまり入り込めない重い感じがしました。原作が幼少期のエピソードから始まる三部作だっただけに、失礼ながら胃もたれしそうな入り方…のように感じました。
監督は奇しくも撮影時、33歳だった奥山由之監督。
好きな作品であればこそ、批判も評価も自分の眼で観て、耳で聴いてから語りたいと思い映画館に足を運びました。
劇場で観ようと思ったのは当然原作が好きだからもありますが、種子島で出逢う花苗役の森七菜がかわいいからです。
しかし鑑賞して最も驚いたのは幼少期の明里役の白山乃愛(13)…演技も見事でしたが、舞台挨拶での立ち居振る舞い、トークで見せる年頃の女の子の可愛らしさ。
(比べては失礼かもしれませんが、芦田愛菜さんの子役時代を思い出させます。)
私が本作で涙を流したのはやはり転校が決まって、公衆電話から貴樹に電話をするシーンの回想から貴樹との文通、種子島への引っ越し前に雪の日に会いに向かう一連のシーン。
原作でも屈指の切ない場面ですが、語り、手帳に記した文字のやさしさ、吸い込まれるような大きな瞳と戸惑いの表情。良かった。尊い…。
また作品のハイライトでもあるこの再会シーン、幼少期の貴樹役の上田悠斗君の学ラン姿がどうしても不釣り合いなのが特によかったです。
それもそのはず撮影当時(2024年7月〜2025年3月)の彼は小学5年生だったのですから。
子どものうちは女の子の方が早熟という言葉もあるくらい。そんな中でも明里と似た自分の世界を持っていたのですから、原作の貴樹は精神的に少し大人びていたと言えるかも。(だから漫画版の#%#は実写映画版ではなかったことに)
明里役の乃愛さんが、ちょっとリードするような感じの桜の木の前でのキスと抱擁…ここで頬を涙が伝って流れてしまうんです。
で、実写映画版オリジナルの補完ですよ。
吉岡秀隆演じる小川館長が代弁するシーン。
原作にはないエピソードであり、これを蛇足と捉えるか、エッセンスと捉えるかは好みでしょう。
そのために宮﨑あおい演じる輿水美鳥(花苗の姉)と大人になったら明里の絡みも描かれる訳で、原作の切なさである人生のちょっとしたすれ違いと伏線が回収されます。
宮﨑あおいが主役級でなく、こんな落ち着きある役所で器用するとは本当に、一昔前なら考えられない贅沢なキャスティングですね。
約束した2009年3月26日にいない…そんな約束を忘れてしまうくらいに幸せな人生を歩んでいて欲しい。
明里の願いを小川館長は代弁する訳ですが、これは原作で明示されていない部分で実写化の最も伝えたかった部分でしょう。
このために1991EVという地球に衝突する可能性の惑星のエピソードが幼少期の2人に挿入されていた訳で、そんな惑星は実在しない話であり、2007年公開の原作に2009年3月26日というエピソードを付け加えることで物語の拡張と補完を狙ったものと思われます。
(この日付って何か意図や意味があるのかも?)
もちろん、花苗と貴樹がカラオケで曲を流すだけの山崎まさよしの『One more time,one more chance』のBGMも、貴樹が電車の中でイヤホンから音漏れして聴こえてくるこの曲に押し出されるように人混みをかき分けて動き出すシーンも人生の何かを変えた、音楽がその時の気持ちを思い出させてくれる効果を巧みに演出に組み込んだなと思います。
奥山監督は元々フォトグラファー。それもポカリスエットやJR SKISKIなど青春の瞬いシーンを静止画に収めてきた方。CMや米津玄師(感電、KICKBACK)や星野源(創造)のミュージックビデオで動画にも挑戦していて、映画のワンシーンワンシーンが写真やスローモーションで描かれる回想場面はそういったところで培われた技術かと。そうした意味でもこれ以上ない組み合わせだったと思います。
あと初日舞台挨拶について。豪華でしたね。
奥山監督に主要キャスト揃い踏み。高畑充希さんと森七菜さんの場をかき乱すマイペースっぷりに大人の貴樹役をつとめた松村北斗がのっかる(笑)
でもグループの中心でもあったということで周りの人が言い淀んだりした場面でフォローに入ったり、茶々を入れたり、周りに溶け込んでまとめる良い人柄を感じられる場面がありました。
大人の貴樹は寡黙で、人付き合いに関心がなく、そういうキャラなので高校時代を演じた青木柚さんもですがあまり地の自分を出さずに演じるに徹していたのでしょう。青木さんは多分、元から貴樹に近く、松村さんは演技で寄せて演じられるのかも。
松村さんが悠斗くんと乃愛さんと仲良しで、三人で観覧車に乗ったエピソードが微笑ましかったです。
MPOさん、コメントありがとうございます。答えのはっきりしないモヤモヤそのまま感じる映画で良かったんですね。なんか安心しました。乃愛ちゃんは確かに演技もいいし、めっちゃ可愛かったですね。かなり際立ってました。ただ大人になったら高畑充希さんの顔ではないかなあ。ハッキリした顔でしたもんね。
MPOさん共感&コメントありがとうございます
女性のほうが割り切りが早いというかハッキリしている。
今までの人生でそう感じることが多々ありました(苦笑)
MP0さま
共感とコメントとフォロバ、ありがとうございます🙂
誤解を恐れずに言えば、18年前のアニメ版『秒速5センチメートル』の存在は、ある意味「初恋の人」なのではないかと思っています。
そして宮﨑駿監督が新海誠監督を認めたように、新海誠監督が奥山由之監督を認めていることが、何よりだと思います🫡
MP0さん、共感どうもありがとうございます。
私も森七菜さんに期待して劇場で観ようと思いました。
余談ですが、2009年3月26日が、2011年3月11日じゃなくて良かったです。
★共感&コメントありがとうございます。
まさにコメントいただいた通りで、「便利さの中で再びつながらなくなる」——この逆説こそが『秒速』の核心ですよね。通信手段が発達するほど、言葉や感情の距離が遠のいていく。その不思議な感覚が、まさに2000年代特有の“喪失の美学”として結晶していたように思います。
実写版はそこを「時間の連続性」として描こうとした結果、原作の“間”や“空白”が少し失われた印象がありました。ただ、あの淡い再構成の試みも、令和の観客にとっては「もう一度、あの時代を再体験する」装置として機能していたように感じます。
おっしゃるように、観客自身の“記憶”や“経験”をどこまで重ね合わせられるかが、この作品の評価を分けたのかもしれませんね。
ひなさん、こんにちは。
幼少期を演じた二人に向けるまなざしにはお兄さんというより父性がにじみ出ていた気がしますね。
もち肌ネタも引っ張り、ほかの人のトークで言いよどんだ場面でもフォローをして本当に落ち着いていましたね。
『ずずめの戸締り』からの新海作品連投に驚きましたが、今後の活躍が楽しみですね。
MP0さま、初めまして🙂
舞台挨拶のほっくん、俳優の顔と、SixTONES冠バラエティ番組での番宣の顔、ギャップで笑いを取ってましたね。
私は子役の2人に向けるほっくんの、暖かい眼差しが見れたことがうれしかったです🤭
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