ブラックドッグのレビュー・感想・評価
全55件中、41~55件目を表示
ピンク・フロイド「ザ・ウォール」を使った思惑。
捨てられた野犬と刑務所帰りの男との交流を描きながらも、共産圏での生活や束縛からの解放を描いた作品。
相米慎二監督のように遠くから被写体を撮影した映像が多く、重要なシークエンスでさえアップにする事はありません。
衰退する街並みや広陵とした大地、白い雲が流れていく青空など目の前には解放的な空間が描かれているにも関わらず、始終聞こえてくる国営放送の声が観る者の心に重く響いてきます。
どこにも自由がない空間の中、野犬たちだけが自由に走り回っている。
そんな犬たちを捕獲していた主人公が黒犬との出会いで変わっていく。
自分に対して牙を剥いていた黒犬のために奔走する主人公を目にした時、心の中が熱くなります。
台詞もほとんどなく、観る事によって明らかになる主人公と黒犬の関係性。
ピンク・フロイド「ザ・ウォール」の楽曲を使った意味も含めて作品の内側に迫る演出が本当に見事です。
「自由に発言すらできない環境でも心の内を叫ぶ方法は幾らでもある」と訴えかけてくるような作品でした。
最小限の抵抗?後は観た人の想像に任せます。
力がある映画だということはわかる。様々な道具立ては素晴らしい。野犬...
力がある映画だということはわかる。様々な道具立ては素晴らしい。野犬、廃墟、中国の開発政策、オリンピック。その中で主人公とブラックドッグとのかかわり。父親。
でも言葉の少ない映画はあまり好きではないし、少し自閉的すぎる。好みではないだけか。
山というとき、日本のような森ではなく、禿山というか丘であり、強風はすごく、電車の警笛が印象的。
男と犬は、時の流れに抗う
その錆びれた街は、ゴビ砂漠の端に在り、
北京五輪を前にして人口の流出が止まらず、
廃墟が目立つ。
再開発のため、まさに重機が入ろうとしているが、
捨てられた犬が野生化し、
群れを成し人に危害を加える。
行政は浄化のため、
野犬の捕獲を始めようとする。
その犬の体毛は漆黒、体躯は精悍。
嘗ては誰かの飼い犬のハズも、
今は群れずに一匹で彷徨い人間に牙を剥く。
不吉感を漂わせる体色故だろうか、
狂犬と恐れられ、人に危害を加える恐れありと
懸賞金を掛けられる。
が、知恵もまわり、俊敏な動きで
易々と捕まることはない。
その男は、誤って人を殺したとして、
十年間を服役していた。
仮釈放となり街に戻って来るも家族は離散、
身の寄る辺は無い。
ひと昔前はミュージシャンとして名を馳せたものの、
今では日々の暮らしにも困窮する。
帰って来た男を旧知の人々は暖かく迎える一方で、
殺された者の家族は
仇敵と付け狙う。
寡黙な男は、周囲ともほとんど口をきかない。
ただ、心根の優しさは、幾つものエピソードが示す通り。
いわくある街で犬と男が出会い、
やがて心を通わせるようになる。
その過程が、時間を費やして描かれる。
とりわけ、最初の出会いと、
その後のマウントを取り合うシークエンスは笑わせる。
当初の孤独と孤独のぶつかり合いから
次第に互いに助け、助けられる掛け替えのない存在になるが、
やがて悲劇が襲う。
しばしば画面を横切る乾燥地帯のタンブルウィードは、
荒廃していく街と人心の象徴でもあるよう。
果てしなく広がる大地は可能性を示す一方で
単色で味気ない世界。
事件を契機に、男は故郷でのしがらみを振り切る決意をする。
もっともその行く末の成否は、誰にも判らない。
態度も時として尊大に見え、口数も過少のため、
その男『ラン(エディ・ポン)』の心象を掴むのは
なかなかに難しい。
それを補うのが、
渋い発色の画面と舞台になる荒涼とした土地なのだろう。
荒く寂しい中に独特の美が垣間見える。
名前を呼ばれることもない黒犬の「演技」は見事で
思わず唸ってしまうほど。
日食で薄暗くなった街を闊歩する動物達のシーンは作中のクライマックスも、
ややファンタジーに過ぎるきらいはあり。
とは言え地域社会の崩壊を感じさせる一本を、
イマイマの中国で撮ったことには驚きを禁じ得ない。
ある意味での体制批判が潜んでいるのだから。
観たことのないもの、一生観れないもののオンパレード
グァン・フー監督。はじめて観た。アクション(戦争)大作とか撮ってる人なのね。そしてさすが中国は広い、ジャジャン・クーのような、と思ったらジャ・ジャンクー出てる笑。
そして昨年のカンヌのある視点の最高峰。なるほど冒頭から面白い。引き合いに出すとしたらキュアロンの『ローマ』か。
一生遭遇することのないような場所(中国といっても山とか川とか都市でなくゴビ砂漠のほうのかなり異郷、アメリカの砂漠の街みたいにもみえる)、人、時間(北京オリンピック)、皆既日食、犬狩り、サーカス、荒野、の中のゴーストタウンに舞い戻る仮釈放の男。
とにかくどこを切り取っても珍しい風景と廃墟が凄い。砂埃感と抜けの雲の広がりと淡く薄いブルーの画調。そして終盤の見たことのないカタルシス。人も動物も大量にゾロゾロ動かれるだけで感動なのに、移り変わっていく時代にひとつの時代へのレクイエムともなるべき感情まで持ってくる。これだけ広い空と土地と空間なのでシネマスコープがぴったり。できるだけ大きなスクリーンで観たい(かった)。
砂漠の美しさと心の温もり
この映画が好きだ。胸を掴まれた。『ブラックドッグ』は、ゴビ砂漠の寂寥と過疎化した町の廃墟を、青みを帯びた静謐な美しさの映像で捉える。寡黙な男と、狂犬病を疑われた野良犬の出会いは、乾いた世界に温かな希望を灯す。街に若い女性がほぼ登場しないのも、取り残された地方の現実を静かに映し出す。
特に心に残るのは、砂漠で車が横転し、寒さに凍えるランがシンを檻から出して運転席で寄り添うシーン。言葉はないのに、孤独な魂同士の絆が胸を打つ。虚無的ではなく、どこか人間的な温もりが漂い、ラストの「人生をもう一度やり直す人のために」という言葉に全てが集約される。グァン・フー監督の詩的な映像とエディ・ポンの抑制された演技が、観た後も心に残る傑作だ。
ただただ、無の2時間でした
犬と主人公が心触れ合って…の感動ストーリーの作品かと思って観たら、全然違って、ただただ退屈な話が延々と続くだけという😓
この作品をハシゴに組み込みために、わざわざ遠出して、スケジュールも無理しただけに、後悔先に立たずとはまさにこのことでした😩
もちろん(笑)、寝落ちしましたが、それにしても、主人公の青年が喋らなさ過ぎも、退屈に拍車をかけているかと😣
内山某作品(また出た😁)のように頭痛は催さなかったので、そこで+0.5はしましたが、何度、途中退席したいと思ったことか😮💨
文学的な作品を求めている人にはハマりますが、エンタメを求めに行くと、痛い目に合う作品でした😵
後の2本、ファンファーレと宝島でこの失敗は取り返すぞ😅
なんと、ピンク・フロイドの曲が (09-25追記)
事前知識を、まったく入れずに観たのですが、なんとピンク・フロイドの『ザ・ウォール』から数曲が使われていてビックリでした。曲は使われていないものの『アニマルズ』の犬と羊も登場。
2025-09-25 追加
実はこれはピンク・フロイドのオマージュではないかという気がしてきました。
・壁にザ・ウォールのポスター
・キーイベントの日蝕はThe Dark Side of the Moonの"The Sun is Eclipsed by the Moon"
・バンジー取壊しの跡に見える中国太鼓
・バイクにFloydと書いてある
・トラが檻から放たれるのはTigers Broke Free
・主人公はザ・ウォールのPinkと重なる
エンド・ロールでSony Musicがクレジットされているのが見えました。
人間と犬の友情
落ちる
オンライン試写にて観賞。
冒頭ゴビ砂漠の丘陵から無数の犬が現れトラックが横転するファーストカットが圧巻!人を殺して出所した孤独な男と人に殺されそうな孤独な黒い犬。不思議な友情に心が温まる。何度落ちても這いあげれば人生は続いていく。納得のパルムドッグ。
これ私は好きな映画だったんだけど、まず主人公ランが喋らない。序盤あまりに口数が少ないのでもしかしたら喋れないのかな?って疑うぐらいだったんだけど、そういう男だったんだと途中で気付いた。人を殺して刑務所に入っていたんだけど、元々相手も悪かったのでは?って遺族の言葉でわかったり。あらゆる出来事に細かい説明がないので、退屈に感じる人もいるかもしれない。
ランと黒い犬の関係って面白くて、始めは捕まえようとして噛まれて、そしたら今度は一緒に隔離されて、しまいにはお互いをわかり合う関係になるっていう。でも、これがなんだか心に沁みて言葉なんて必要ないな…って思えたりして。
ランがバイクで落ちる描写も観てるとハラハラするんだけど、当の本人は淡々と這い上がってきてまた進んでいくのでホッとしながらクスッと笑えちゃうのもよかったな。
希望も感じるラストで、失敗してもつらい事があっても、人生は続くしその先にいいこともきっとありそうだなって思えてよかった。
グザヴィエ・ドランも絶賛したこの作品を観れてよかったし、ランを演じたエディ・ポンがあの黒い犬を引き取って一緒に暮らしていることを知って嬉しかった。速攻でインスタフォローしたよ!
中国映画としては珍しいかな?(オンライン試写会は全てネタバレ扱い)
今年182本目(合計1,723本目/今月(2025年9月度)1本目)。
fansvoiceさまに感謝を。
中国映画というと、例のごとく検閲済みというようなものが出ますが、犬と一緒にあちらこちらを移動するというタイプのストーリーで、会話も少な目な部分が多々あります。この意味で、セリフ少な目で細かいところは個人で考えてねというフランス映画のような印象を受けました。
理解が難しかった点としてやはりあげざるを得ないのが、字幕が不足しているところで、北京を頂点にいろいろな街並みが出ますが、それらのお店等の看板の翻訳が大半ないため、何をしているのか映像から推測するか、漢字文化圏であることから推測する必要があり、この部分も手伝って、余計にフランス映画っぽくなってしまっている気がします(ただ、そのあとの監督さんを迎えてのYoutubeでのトークショーでは、最初からそのようにフランス映画っぽい展開を想定して作られたということ)。
この点まで了知してみるなら良いですが、そうでないと、一般的な中国映画ではちょっと見ないタイプなので、そこそこ評価が荒れそうかなというところです。
採点は以下まで考慮しています。
------------------------------------------
(減点0.3/日本で見るにあたってある程度、漢字の推測力を要する)
もちろん、字幕がない場合に、同じ漢字文化圏である日本において「部分的に」行うものであり補完的なものですが、字幕が中途半端であるために、そうせざるを得ない(もちろん、実際の上映でも英語放映なんてないでしょうし…)部分が多々あります。
この部分も手伝って、フランス映画っぽい部分が多々含まれていて(ただ、それは上述通り意図されている)、かなり理解が難しいなという印象です。
------------------------------------------
カンヌ国際映画祭、東京国際映画祭、横浜国際映画祭!
国際映画祭に一般人が行けるとは思わず、以前、見逃し、一般映画館にも来ず、見れなかった経験から、今回は、東京と横浜に行き、見てきました。
格式が高く、私に理解できるか不安でしたが、大丈夫、付いていけました!
ほとんど、話さない役に挑戦したエディ。感情を見ている側に伝えるのは大変だったと思う作品でした。
ワンちゃんとの心の通わせ方も微笑ましかったし、自分の役の設定と周りとの付き合い方のもどかしさ。でも見てくれている人達もいるから、前進する希望は忘れていない。
個人的に、殴られたり、落ちたりすると、心が痛かった私ですが。(笑)
国際映画祭へのきっかけになれました。嬉しい事に、9月には一般上映してくれるみたいなので、又、見ようと思います。
全55件中、41~55件目を表示







