「デ・キリコと村上春樹」ブラックドッグ さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)
デ・キリコと村上春樹
不思議な映画でした。
幻想的な砂漠の風景と重ねて不条理ギリギリの人々の交流が映し出されます。
広大なゴビに接する架空の町、赤峡を舞台に寡黙な青年ランの日々の暮らし、再会、新たな出会い、そしていくつかの別れが描き出されます。
と言うと、ありがちな中国の田舎町系ムービー(私的な分類でスミマセン)のようですが、一線を画しているのは第一に構図の美しさです。
砂漠、野犬の群れ、寂れた動物園、廃墟となった劇場、人気のない集合住宅…といったドライな雰囲気を持つモチーフが、デ・キリコの絵画を連想させる、物悲しさを伴う美しい構図で繰り返し映し出されます。
更に主人公の青年ランと周囲の人々、そしてタイトルになった黒犬との交流はどことなく村上春樹の小説を彷彿とさせる不条理感を伴っています。
青年の経歴について多くは語られず、人々の断片的な言葉から過去を推測するしかない部分も含めて。
この2つの要素が相まって観客は現実の境界をいつしか見失い、幻想的な世界観へ誘われます。効果的に挿入されるスタイリッシュな英語の歌詞に乗って。
めったに喋らない無表情なランが時折見せる笑顔とランの幼馴染の青年のキャラが殊の外印象的でした。
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ひろちゃんのカレシさんのコメント
2025年9月23日
お邪魔します。
自分のレビューでは書き忘れたけど、仰る通り音楽が本当に効果的で、ひょっとして曲にインスパイアされた脚本なのか、と勘繰ってしまいました。特にエンドロールで流れる「飛ばせはしないが歌うのは許すかも」(Pink Floyd “Mother”)がハマり過ぎて怖いくらいでした。
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