ブラックドッグのレビュー・感想・評価
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破壊された街で芽生える種族を超えた友情の永遠
去年の東京国際映画祭で観て以来、あの衝撃が今も治らない。
物語はシンプルで強烈だ。北京オリンピック前の中国、ゴビ砂漠の端にある街は荒廃し、至る所で飼い主を無くした野良犬たちが徘徊している。みんな、街を捨てて出て行ったのだ。オリンピックのためのインフラ整備はもとあった人々の営みを完全に破壊し、希望のかけらもない、廃墟を作り出している。文明とは、発展とは、なんと酷いことをするものか!?
そんな故郷の街に刑期を終えて戻ってきた主人公の青年、ランが、決して野良犬退治の網に引っかからず、群れから外れて生きる一匹の犬と出会い、不思議な友情で結ばれていく。取り残された者同士が、種族を超えた関係性をじわじわと作り上げていくプロセスは、無音で力強く、時に笑いを含み、吹き荒ぶ砂嵐に立ち向かう勇気と希望を観客にも与えてくれる。
中国とは言わず、世界のあちこちで起きている破壊の実態を人間と犬の関係性に集約させた映画は、ランを演じるエディ・ポンと犬を演じる天才犬、シンの名コンビが奏でるハーモニーに大きく助けられている。調べてみたら、撮影終了後、ポンとシンは一緒に暮らしているとか。廃墟で生まれた友情は長く尊いのだ。
懐かしく切ない
北京オリンピックの頃の中国って、あんなに発展途上という感じだったのを忘れてた。
黒い犬の飼い主に対する忠誠心が泣ける。
お互い孤独で周りの群れに馴染めない者同士、寄り添って生きている。お互いが居ればきっと大丈夫。
群れて同調しなくても、しっかりと自分を持って生きていけば必ず分かり合える人は居る。って思わせてくれた。
しかしな、あの羊肉屋の豹変っぷり、お国柄なのかな?どの口がゆーてんの?って思う。
ランが何度も挑戦して失敗するところが、諦めない彼の精神力を示しているのだろうけど、他の方法考えたら?って思った。
全体的に映像の色合いが懐かしくて切なくて、後からじんわりくる映画。
時代の流れに翻弄される人々
居場所のない時代を生きる現代中国の〝西部劇〟
鮮烈な印象を残す映画だった。
西部劇のような荒々しさと、急速に変貌する現代中国の影の部分が重なり合う。さらに〝時代に取り残された人々〟の生き様を描写して、独特の映像世界を作り上げている。
これほどの力量の監督なのに、これまで名前を知らず、作品も見たことがなかった。
劇場のポスターには前作「エイト・ハンドレッド」が2020年の興行成績世界No.1だと書いてある。前作はコロナ禍でアメリカ映画の上映が軒並み延期された年で、また興収の半分は中国だったという事情もあったようが、何より日中戦争の英雄譚ということで、日本公開が難しかったのだろうか(日本では翌21年に公開されたらしい)。また、その他の過去作も昭和のベストセラー「悪魔の飽食」で紹介された731部隊を想起させる作品など、抗日戦線を題材にした作品もあり、日本に紹介しにくい監督であったのかもしれない。
本作の舞台は2008年。北京オリンピックが世界的に注目を集めた年でもあり、また四川大地震の年でもある。場所は、かつて油田開発で賑わったゴビ砂漠の辺縁の街。油田は掘り尽くしてしまい、多数あるアパートは廃墟となり、かつての住人の労働者たちが置いていった犬が半野生化している。
ドラマチックな設定だが、調べてみると、こういう状況は実際にあったようだ。北京オリンピックもあって、都市開発が一気に進む一方で、こうして取り残されたような地方都市もあった。戸籍制度もあるから、そこに取り残されたように暮らし続けざるを得ない人々もいたのだろう。
この夏見た映画では日本の「夏の砂の上」、アメリカは古い映画だと「ギルバート・グレイブ」「ノマド・ランド」、イギリスの「バード」、中国映画だとジャ・ジャンクー監督「長江哀歌」などで描かれた経済成長の歪みに翻弄される人々の世界的で普遍的な課題を描いた映画でもある。
物語の冒頭は西部劇ようだが中国のゴビ砂漠。どこまでも続く平原を走るバスが突然現れた野生化した犬の群れに驚き転倒する。そしてそのバスで主人公が着いた故郷は廃墟がひしめく滅びゆく街になっていた。
この街の様子に合わせて、映像も退色した古いカラープリントのような色合いである。その中で砂漠性の気候を反映し、空だけはいつも雲ひとつなく鮮やかな濃い青色だ。いつまでも青い自然の鮮やかさと、退色した人間社会のコントラストが見事だ。
この映画にはたくさんの行き場のない人々が出てくる。それはこの映画の重要な要素・捨て犬が象徴するように、発展する社会から取り残され、その発展からは無用とされた人でもある。
まず主人公。かつて賑わった街で人気の歌手だったが10年間服役してさびれ果てた町に帰ってきた。35歳、独身。地元に帰っても一緒に暮らす家族はいない。これからどう生きていくか、何の計画も見通しもない。
母はもともとおらず、父は閉園された動物園に住み着いて、行き場を失った動物たちの面倒を見ている。
ヒロインになるかと思わせる、田舎の街を巡るサーカス団の女は同じサーカスの男と3年付き合っていて35になったが結婚を申し込まれない(男性の側が、かなりのお金や住居を用意する慣習もあるようだから、それが関係しているのかもしれない)。
街を離れた人たちが置いていった犬たちは半分廃墟化した街で群れを成して暮らしている。
その中で、群れと離れて暮らす一頭の黒い犬と主人公は絆を築く。主人公はほとんど喋らない。わかりやすい無口なヒーローでもあるけれど、人生の目標・進むべき道を見失い、混乱し、語るべき言葉を失っていることが、様々な場面で示される。
この主人公の内面は、多くの人が共感するのではないだろうか。日本では、近年単身世帯が最大世帯となったけれど、僕自身、大学で都会に一人移り住み、そこで就職し、家庭を持たず一人暮らしだ。地元に帰っても、居場所とは思えないし、会社を辞めた現在では、都市も別に自分の居場所ではない。
むしろ、地元に帰った主人公の方が恵まれている面もある。かつての知り合いが何かとよくしてくれる。でも、反対に彼を追い続け、暴力の振るう知り合いもいて、地縁社会で生きるのも大変なんである。
その中で、主人公が黒い犬と絆を結ぶのは、孤独の癒やし方としては最高も方法かもしれない。主人と認めた人物と、感情的交流をするように進化した動物だからだ。しかも、家族は永続的かどうかも危うい現代で、最も安心できる裏切らない相手だろう。
このシャープで闘争的な身体を持った犬も、一匹狼に憧れているようだ。その強さを身につけるしかないと本能的に悟っている。これは主人公の写し鏡でもある。これから、どう生きていくのかわからないけれど、とにかく強くなって、日々を一歩一歩前に進む。どちらが正しい方向かはわからないけれど、とのかく少しずつ前に、タフに進むしかないのだ。
映画の説明とポスターから、ジョン・ウィックのようなスーパーヒーローを思い浮かべた。しかしずっと等身大な弱さを漂わせ、同時に強くあろうと何とか自分を律して、自分を保っているような人物造形に惹きつけられた。
ジャンル映画的なエンターテイメントとして鑑賞することもできるけれど、背景に現代を生きる人の苦しさを描いていて、味わい深い作品でもあり、また、遠回しに検閲に引っかからないように、資本主義化しつつある現代中国の歪みを描く映画でもあると思う。
この監督の別の作品も観てみたくなった。
砂漠の街で育まれた熱い絆
本作のグァン・フー監督のインタビューによると、主人公ランは失語症という設定で、台詞が極端に少ないのですが、それを補うようなビジュアルが質、量ともに圧倒的にすごいです。
野犬の群れの疾走、車両の横転、砂漠の風塵、日蝕、地震、バイクとサイドカー...
動物園の展望台から見下ろす、遠くに列車が通過していく風景が素晴らしく、緑のない、青黒い画質が静かに心に沁みていきます。
オリンピックに沸き立つ活気と取り残された街の残がい。年老いた父の病床と生命の息吹を感じる仔犬の誕生。この対比、ジャ・ジャンクー監督の映画を彷彿とさせます。実際ジャ監督は、グァン監督の盟友だそうで、本作にも主要な役で出演されています。
証明写真の撮影で、ランは笑ってたしなめられましたが、黒犬はちゃんと神妙に構えてお手本を見せていました(笑)。
「最高のロードムービー」
意外と退屈せずに観れました
犬も凄いが、虎も凄いし、檻に入れられたウサギも凄い
2025.9.25 字幕 アップリンク京都
204年の中国映画(110分、G)
北京オリンピックを控えた過疎の村にて、服役を終えた青年が懸賞金の掛かった黒い犬と出会う様子を描いたヒューマンドラマ
監督はグアン・フー
脚本はゲイ・ルイ&グアン・フー&ウー・ピン
原題は『狗陣』で「犬の群れ」、英題は「Black Dog」
物語の舞台は、中国・北西部にある赤峡
友人を死なせた罪を背負うラン・ヨンフイ(エディ・ポン)は、仮釈放を認められ、地元に帰ることになった
途中でバスが横転するなどのアクシデントがあったものの、ヨンフイは無事に自宅へと辿り着いた
だが、家には鍵が掛かっていて、父(ガオ・チャン)の姿はどこにもなかった
そこに隣人のラクダおじさん(ニウベン)がやってきて、父は動物園のエサ係をして、家には帰ってこないと知らされる
ヨンフイは高台に登って動物園にいる父を見つけるものの、声を掛けることはできなかった
ヨンフイは、友人を死なせたことでフー一族に恨まれていて、帰ってきた早々に脅しをかけられてしまう
友人の叔父(フー・シャオウァン)から「過失致死」に納得がいかないと言われ、幾度となく謝罪を要求される
だが、彼の怒りは収まることはなく、手下たちに付け回されていた
そんな町では、北京五輪を迎えて再開発の話が浮上していて、そのために野放しになっている野犬を何とかしなかければならないと言う問題を抱えていた
町の有力者で、ヨンフイの叔父でもあるヤオ(ジャ・ジャンクー)はその業務を警察から請け負い、町の若者を集めて野犬の捕獲隊を結成する
そして、そのメンバーにヨンフイも加わることになったのである
物語は、廃墟となった団地にて、ヨンフイが懸賞金を賭けられている黒い犬を見つけるところから動き出す
当初は捕まえて大金を得ようと考えていたが、すばしっこく獰猛で返り討ちにあってしまう
さらに、その犬は「狂犬病」を発症していると疑われていて、町ではその犬の排除を優先していた
噛まれたヨンフイは病気を心配するものの、幼馴染のニエ(チョウ・ヨウ)のアドバイスを受けて、犬とともに隔離生活をすることになったのである
映画のテーマとしては、「嫌疑を掛けられたものの再出発」と言う感じになっていて、殺人者と思われているヨンフイと、狂犬病だと思われている黒い犬の立場はよく似ている
それぞれはその嫌疑を晴らすことになるものの、この土地は生きていくには辛い場所で、旅立たざるを得なくなってしまう
黒い犬は事故が原因で衰弱して亡くなってしまうが、犬は子どもを残していたようで、ヨンフイはその犬と共に旅に出ることになった
この町は再開発が予定されているが、わずかな町人しかおらず、再開発がいつ行われるかもわからない
華々しく都市部で五輪が行われていても、彼らにとっての楽しみは皆既日食ぐらいしかなかったりする
町にはほとんど子どももおらず、雑技団も一瞬で場所を変えてしまうほど過疎っているので、行く末は良くないように描かれている
物語性はあまりないものの、メッセージとしては「新しい生活のためには新しい人間関係が必要」と言う感じに思えた
明言はされないものの、ヨンフイは雑技団のグレープ(トン・リーヤー)を追い掛けたのだろう
背中に背負ったリュックには、黒い犬の子どもらしき犬が入っていたのだが、犬自身もあの地で暮らすことのリスクは大きい
再開発で野犬は取締られているが、その予後と言うのは想像に難くはないので、そう言ったことが行われるであろう土地と言うのも、心優しいヨンフイには合わないのではないだろうか
いずれにせよ、嫌疑が払拭されて、わだかまりが消えても、再出発の担保にはならないと思う
自分自身の価値観と合う町でないと心身ともに良いとは思えず、ヨンフイにとっての赤峡はそうではないと言える
劇中で印象的だったのは、何度となく板の橋にチャレンジしては失敗する場面で、あの場所は友人が亡くなった場所でもあった
友人もおそらくそこを渡ることはできなかったと思うのだが、あの場所は新天地に向かうためのハードルにも見える
最終的にそこを渡ることはできなかったのだが、他の土地に向かうには別のルートを通っても良いと言うことなのだろう
それを思うと、ヨンフイは踏ん切りをつけるためにわざと失敗をしたのかな、と感じた
人生
House
ポスターを観る感じ青年と犬の逃避行ものだと思っていたんですが、野犬狩りをメインに据えたおっちゃんと犬との交流が描かれ、時に厳しく、時に微笑ましい不思議なテイストに仕上がっていました。
誤認殺人をしてしまった主人公・ランが釈放後に地元に戻ってきてから、野犬狩りを行う組織に入り、そこで捕まえた黒い犬との生活をしていくうちにだんだんに気持ちが芽生えてくるというワンコ映画です。
割と色んな人との絡みがあるので宣伝文は偽りそのものです。
ランが喋らないのには何か理由があるのかなーと思ったら、信頼している人には口を開く感じで、他は喋るのがめんどくさくて相槌で対応している感じがわかりにくかったのはもったいないなと思いました。
思わず喋るんかい!とツッコミを入れたくなりました。
最初は歪みあっていたのに、あっという間に心通わせあってワチャワチャしていますし、一緒にバイクに乗って駆け抜けていたりと楽しそうでした。
後半は野犬狩りが再加速し、ワンコもどこかに行ってしまうという少し重めな展開も続きますが、ランの行動力も凄まじいものがあり、結果的にはハッピーで終わったのかなと思いました。
街に動物たちが解き放たれたのは大丈夫かい?と思ってしまいましたが笑
中国の広々とした街並み、広大な砂漠を味わえたのは良かったですし、時代背景が2008年北京オリンピック間近の再開発中の街ってのも味わい深いものがありました。
次の週に「ブラックバッグ」という作品が控えている中で同じブラックを冠する今作も公開と、どちらも原題通りなので悪くは言えないんですが、公開時期どちらかずらしちゃっても良かったんじゃね?と思いました。
この2本を同時にやる映画館は絶対間違い発生しまくるだろうなぁと今から憂いています。
鑑賞日 9/20
鑑賞時間 14:10〜16:05
デ・キリコと村上春樹
不思議な映画でした。
幻想的な砂漠の風景と重ねて不条理ギリギリの人々の交流が映し出されます。
広大なゴビに接する架空の町、赤峡を舞台に寡黙な青年ランの日々の暮らし、再会、新たな出会い、そしていくつかの別れが描き出されます。
と言うと、ありがちな中国の田舎町系ムービー(私的な分類でスミマセン)のようですが、一線を画しているのは第一に構図の美しさです。
砂漠、野犬の群れ、寂れた動物園、廃墟となった劇場、人気のない集合住宅…といったドライな雰囲気を持つモチーフが、デ・キリコの絵画を連想させる、物悲しさを伴う美しい構図で繰り返し映し出されます。
更に主人公の青年ランと周囲の人々、そしてタイトルになった黒犬との交流はどことなく村上春樹の小説を彷彿とさせる不条理感を伴っています。
青年の経歴について多くは語られず、人々の断片的な言葉から過去を推測するしかない部分も含めて。
この2つの要素が相まって観客は現実の境界をいつしか見失い、幻想的な世界観へ誘われます。効果的に挿入されるスタイリッシュな英語の歌詞に乗って。
めったに喋らない無表情なランが時折見せる笑顔とランの幼馴染の青年のキャラが殊の外印象的でした。
見心地のいい、最高な映画
終わりと始まり
2008年ゴビ砂漠に接する野犬だらけの寂れた町に、仮釈放で帰ってきた寡黙な男と、町の人たちの話。
野犬の大群が襲来し、町へ向かうバスが横転し、さらには金が無くなったと騒ぐ乗客があらわれて巻き起こっていく。
ランは町の特に年配者からは可愛がられている感じだけれど、帰郷を知って荒ぶるヤツらも現れて…。
ちょっと喋らなさ加減が過剰でわざとらしく感じたりもするし、序盤の野犬刈りの際の行動原理は良くわからんし。
しかしながら、彼を理解する人たちや黒犬との関係はなかなかに濃くて情が感じられて良い感じ。
遠回りした本当は優しい男が、不器用ながら人間関係を再構築し、そして前に踏み出すお話しという感じで、クールな空気感なのにところどころクスっとさせるシーンもあって、なかなか面白かった。
グレープとの関係性はもうちょい匂わせても良かったんじゃ…。
壁に滲む地図な出会い。
2008年北京五輪が51日後に迫るなか刑期を終え寂れた町へ帰る寡黙な男・ランと、その町に溢れかえる野良犬…の中で狂犬病を持ってる事で報償金を掛けられてる黒犬の話。
出所上がりで金も無く、寄った食堂で見かけたチラシ写真「狂犬病の黒犬捕まえたら報償金」、印刷された写真を見れば廃団地で見掛けた犬で…捕らえようとその廃団地へと向かうランだったが…。
廃団地での隅でした立ちション場所が出会い、言葉足らずが他人とのトラブルの元のランだけど、人と動物に思いやりがありいい奴、最初は恐る恐るだったけれどランと黒犬の距離が縮まりランにとっては大切な犬に変わってく過程が良かった。
予告観て雰囲気いいなと思い観に行ったけど面白かった。グレープ役演じた中国女子トン・リーヤーさん可愛い♡
似た物同士
ですね。この1人と1匹は。無口で人とは余り交わらないけど、凄く優しい。ブラックドックは不幸にも亡くなってしまうけど、その子供との今後の生活は明るいものであってくれる事を願います。
罪を犯した人の孤独と再生の物語
モノトーンに見える宣材写真の一枚が目に留まって気になって見に行きました。とにかく1シーン1シーンの撮り方がいいです。浅い光とグレーの映像が西中国のゴビに近い荒涼とした乾いた空気感を強く作り出していて、主人公の心の渇きもよりしんみりと伝わって来ます。ほとんどしゃべらない主人公でパーフェクトデイズの役所広司並みです。両方とも「孤独」ですが、ただこの映画の主人公の方が若いので、バッファロー66のヴィンセント・ギャロに対して抱いた感情と同じような、途中で希望を持たせてほしい、救ってほしい、と願ってしまいます。わりと静かな映画であったので私なりに感受性の扉を広げて積極的に感じようと努力してました。少しわかった気がしました。
中国経済発展の前夜で中国はそれまでの古いものを壊して再生し始めている最中で、この若者の人生をシンクロさせて、未来への希望も持たせてくれてうれしくなりました。
現在、死、再生も上手に表現されていてこの映画で伝えたいことがしっかりと心に残りました。
中国の麻雀牌でかっ
ピンク・フロイド「ザ・ウォール」を使った思惑。
捨てられた野犬と刑務所帰りの男との交流を描きながらも、共産圏での生活や束縛からの解放を描いた作品。
相米慎二監督のように遠くから被写体を撮影した映像が多く、重要なシークエンスでさえアップにする事はありません。
衰退する街並みや広陵とした大地、白い雲が流れていく青空など目の前には解放的な空間が描かれているにも関わらず、始終聞こえてくる国営放送の声が観る者の心に重く響いてきます。
どこにも自由がない空間の中、野犬たちだけが自由に走り回っている。
そんな犬たちを捕獲していた主人公が黒犬との出会いで変わっていく。
自分に対して牙を剥いていた黒犬のために奔走する主人公を目にした時、心の中が熱くなります。
台詞もほとんどなく、観る事によって明らかになる主人公と黒犬の関係性。
ピンク・フロイド「ザ・ウォール」の楽曲を使った意味も含めて作品の内側に迫る演出が本当に見事です。
「自由に発言すらできない環境でも心の内を叫ぶ方法は幾らでもある」と訴えかけてくるような作品でした。
全33件中、1~20件目を表示