「日本地図の違和感」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション mojunさんの映画レビュー(感想・評価)
日本地図の違和感
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映画館の暗がりで、俺はスクリーンを睨んでいた。『TOKYO MER 南海ミッション』の地図カットだ。全国の点々――MERが展開しているはずの拠点――が光る。その瞬間、脳裏に地図ではなく、陣地図が浮かんだ。離島は端っこで霞んでる。誰かが劇中で言った。「南の離島は含めなくていいんじゃない?」俺は思わず笑った。冗談じゃない、命の値踏みか。
地図は冷たい。俯瞰される国土、並ぶマーク、色分け――全部が「誰がどこを管理しているか」を無言で語る。製作者の狙いは説明だったのかもしれない。でも観客の目は騙せない。俺の目には、国家の掌握、権力の匂い、そして切り捨てられる存在の影が映る。医療ヒーローの物語のはずが、そこには現実の冷酷さが透けて見える。
離島医療は現実でも問題だ。医師は足りず、政治は数字を追う。画面の台詞はフィクションの一幕だが、現実の冷たい論理が重なり、余韻を残す。効率と人命の狭間で、俺は息を潜め、スクリーンを睨む。
でも、物語は希望も見せる。南海の人々を救うMERの奮闘が、陣地の読みを逆手に取る。命は切り捨てられず、島は忘れ去られずに済む。地図はただの地図じゃない。説明映像以上の装置で、観客に問いを投げかける。国家、周縁、効率、命――どれを優先するかを。
暗がりでスクリーンを見つめる俺は、答えを知っているわけじゃない。ただ、映画が提示した問いと対峙するしかない。そして、あの地図の冷たさは、忘れられない。
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