「今回の作品では南海MERの活躍を通じて、今後の離島医療や僻地医療をどうするかという問題提起が色濃く提示されています。」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
今回の作品では南海MERの活躍を通じて、今後の離島医療や僻地医療をどうするかという問題提起が色濃く提示されています。
オペ室搭載の大型車両で事故や災害現場に駆けつける救命医療チーム(モバイル・エマージェンシー・ルーム=MER)の活躍を描いたテレビドラマ「TOKYO MER 走る緊急救命室」の劇場版第2作。
●ストーリー
TOKYO MERの活躍が高く評価され、前回では厚労省直轄のYOKOHAMA MERが新設されて以降、この2年で札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡にもMERが設置されました。それを受けて沖縄・鹿児島では離島地域に対応できるMERの誘致活動が活発化し、オペ室搭載の中型車両を乗せたフェリーで離島での事故や災害に対応する「南海 MER」の試験運用が始まります。南海MERへは指導スタッフとしてTOKYO MERのチーフドクター・喜多見幸太(鈴木亮平)と看護師の蔵前夏梅(菜々緒)が派遣されたのです。
喜多見と夏梅を除く南海MERのメンバーは、チーフドクター候補の牧志秀実(江口洋介)、麻酔科医の武美幸(宮澤エマ)、看護師兼臨床工学技士兼操舵手の常盤拓(高杉真宙)、同じく看護師兼臨床工学技士兼操舵手の知花青空(生見愛瑠)の四人。
南海MERは沖縄と鹿児島の離島地域を活動の対象とした新たな試みです。県を跨いでの活動となるため、自治体ではなく厚労省直轄であることがよりやがて大きな意味を持つことに。
しかし、南海MERには半年の試験運用の期間で全く出動の機会がなく、ようやく発生した初の緊急出動でも、医療設備の不十分さからオペを行わずにドクターヘリに任せてしまい南海MERの存在感を著しく悪くしてしまったのです。それを受けて厚労省内では、ますます南海MER不要論がますます優勢となってしまったのでした。
そんなある日、鹿児島県の諏訪之瀬島で火山が噴火し、ついに大規模医療事案への出動が決まる。島では想像をはるかに超える惨状が広がっており、噴煙のためヘリコプターによる救助はできず、海上自衛隊や海上保安庁の到着も数十分後だという。噴石が飛び交い溶岩が迫るなか、南海MERは島に取り残された79人の命を救うべく高難度のミッションに挑みます。
●解説
今回の作品では南海MERの活躍を通じて、今後の離島医療や僻地医療をどうするかという問題提起が色濃く提示されています。エンドロールでは、back numberによる主題歌「幕が上がる」をバックに、実際に離島医療に取り組む医療従事者達の姿が映し出されていました。
「Dr.コトー診療所」のロケ地としても知られている与那国町で唯一の診療所の医師が来年4月以降、不在になるおそれがあるなど離島や僻地の医療をどうやって確立すべきかと問題になってきています。その問いかけへ、解決策の一つとして南海MERの活躍が描かれていたのです。
MERの機動力を活かして離島や僻地を巡回すれば、無医村の地域や島でも、その場で緊急オペの対応もでき、助かる命を増やすことができます。
しかし同時にMERの弱点も露呈しました。それは大規模医療事案はそうそう起こるものではなく、平時はずっと閑古鳥が鳴く事にあります。そのため南海MERに対して、意味がないとか金食い虫など無用論が起こったのです。もう一点は、東京MERならともかく、地方のMERは予算の関係から設備も不十分で、大規模医療事案に充分対応できなく、結局ドクターヘリに頼ってしまうことになりがちなのです。この中途半端さが無用論を巻き起こしたのでした。
けれども本作ではそれらの無用論に反撃しています。設備の不十分さを持ちながらも地方のMERの利点として、離島や僻地をきめ細かく巡回することで、地域に密着し、住人個々の健康状態を適切に管理していることでした。これが諏訪之瀬島での救命活動でも、治療順位を決める上で決め手になりました。劇中喜多見が厚生省で居並ぶ不要論者を前にたとえで話す言葉に、東京MERが大学病院だとしたら、南海MERは地域の町医者なんだということです。
もう一つはMERの広域運用の可能性を示したことです。小さなエリアでは大規模医療事案はそうそう起こりうるものではありませんが、今回のように県をまたいだ地方広域なら出動機会も増すことでしょう。
そして地方MERの弱点をカバーするため、大都市圏のMERが出動する可能性も示唆しました。後半で南海MERが停電でどうにもならなくなったとき、まるで真打ち登場のごとくTOKYO MERが自衛隊機に搭載されて、越境登場します。TOKYO MERをここ一番の救世主として活用する見事な展開です。
これは続編の可能性として、日本が未曾有の大災害に襲われたときに、各地のMERが集結する大型クロスオーバー作品の布石になったのではないでしょうか。
現に南海MERのメンバーが喜多見に、東京で何かあったら私たちも応援に向かいますという台詞が残っています。
赤塚都知事(石田ゆり子)が南海MER構想を推進し、東京の救急医療に空白を作るというリスクを負ってTOKYO MERを越境出動させた意図は明快でした。それは東京にも離島を抱えており、まずは離島治療の有効性を南海MERで探って見たかったようなのです。
●感想
鑑賞前は、TOKYO MERの物語を鹿児島の離島で展開するのは、あまりにも無理筋であると思っていたら脚本の設定が巧みで、うまくつながって納得のできばえでした。まさかTOKYO MERの「T01」まで救世主のごとく登場するなんて、思いもよりませんでした。
そして諏訪之瀬島での噴火シーンのリアルさは舌を巻きました。噴石や火山灰が雪のように降り注ぐところは本当にリアルで、避難する住民の大変さが手を取るように伝わってきました。
また南海MERの車両や船舶もCGではなく、本物を作り上げて走らせているところがすごいと思いました。
またそれと並行して、顕著なのが南海MERと隊員たちが遭遇するビンチが半端なく押し寄せることです。一難去ってまた一難。ドキドキがずっと続きました。MER船の燃料が切れたときは、船に避難していた島民が少しでも燃料が持つように海に飛び込む事態になってしまいます。このときこの危機の切り抜け方は厚労省の官僚である音羽(賀来賢人)の差し金だったものの、いくら官僚の絶大な力があっても
ちょっと都合がよすぎるなと感じました。
さらに感動的なのは命を簡単に切り捨てない、「全員助ける」という登場人物たちの熱い情熱です。
諏訪之瀬島の取り残された8名の北部島民の救助に当たる喜多見はもちろん、当初噴火する島に怖がっていた操舵手の知花までもが勇敢に諏訪之瀬島への接岸を試みるのです。
また島民達の自分の危機もものともせず助け合う姿も感動的でした。
本作には前作の両国大臣のように、死者が出てもいいからTOKYO MERを潰そうとするような明らかな悪意を持って現場を邪魔する存在がいません。その代わり本作では人間の中に強大な敵がいないからこそ、『南海ミッション』では自然の脅威が際立っていました。
それだけに現場を指揮する厚生労働省では、もう手の打ちようがないと諦めムードが漂っていましたが、そこに檄を放った音羽の最後まで諦めるなという言葉にぐっときました。彼の決断が、この後の南海MERの救出活動を大きくサポートすることになるのです。
そんなにところにも、本作の「全員助ける」という理念を感じたのです。この熱いメッセージは、見るものに勇気を与えてくれます。
もし将来自分が遭難したり、災害でビンチに陥ったときも、本作を思い起こせば、絶対に諦めない気持ちを思い起こすことでしょう。
上映時間 :115分
劇場公開日:2025年8月1日
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