劇場公開日 2025年3月1日

「地下の闇と映画館の闇がつながる」Underground アンダーグラウンド 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0地下の闇と映画館の闇がつながる

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

小田香監督の撮るショットは凄みがある。作品を発表するごとに抽象表現に向かっているなと感じているのだけど、本作はそれをさらに推し進めている感じだ。今回はダンサーと組んでドキュメンタリーのようなインスタレーションの実験映像のような、とても不可思議な映像空間を作り上げている。
シャドウという存在が出てくるんだけど、それが何の化身かはよくわからない。しかし、彼女の目を通してみた世界の「驚き」みたいなものはスクリーンを通して如実に感じられる。世界の体験の仕方を変えてくれるような、そういう気分になる鑑賞体験だ。
映画館の暗闇と地下世界の暗闇が地続きになることで、フレームの喪失を感じてしまうような、非常に強い没入感を生み出すすごい映画だと思う。小田監督のショットはそうやって見る人を非常に深い深部にまで連れて行ってしまう凄みがある。よくわからないけど、もう一回見たくなる、というかもう一回体験したくなる。

杉本穂高